午後2時を少し過ぎた頃、蛾が飛んできて、私の数m前の木にとまりました。 見に行くと、オオノコメエダシャクでした。 腹側から見ると、2本の脚を葉に引っ掛け、腹部を下げてブラブラしています(下の写真)。
ちゃんと飛んできたので、飛べるはずなのですが、カメラをかなり近づけてもフラッシュを光らせても、全く反応しません。 隠蔽擬態や保護色によほどの“自信”があって、動かない方が安全だと思っているように見えます。 片側の脚だけをひっかけてブラブラしているのも、多くの蛾とは異なるとまり方で、“蛾じゃないよ”と主張しているようです。
オオノコメエダシャクにとてもよく似て、同じように腹部を曲げてとまる同属の蛾にヒメノコメエダシャクがいます。 この蛾もすぐに飛んで逃げることが無く、壁にとまっていたヒメノコメエダシャクを簡単に“手乗り蛾”にできた時の様子を、こちらに載せています。
このことに関して星谷仁さんは、ブログにおもしろい仮説を書いておられます。 それによると、昆虫は本来左右対称の形をしていて、天敵は虫を見つける際にこの《対称性》を手掛かりの1つにとしているのではないか。 ノコメエダシャクの仲間は、天敵の《対称性サーチ》にひっかかりにくくするための工夫をしているのではないか、ということです。(詳しくはこちら)
星谷仁さんの「対称性かく乱戦術」を、今回のオオノコメエダシャクのケースで具体的に見ていくと、最も目立つのは、写真のように腹部を曲げていることです。 しかし他にもあって・・・
上の写真は、オオノコメエダシャクを背側から見たところですが、左右の前翅外縁の翅頂近くの切れ込み(水色の○印)を比較すると、左の翅(上側)の方が深く見えます。 写真だけを見ていると、左右の翅の形がほんとうに違うのではないかと思ってしまいます。
そのように見える“種明かし”をすると、オオノコメエダシャクの正面から見ると、翅は軽く「へ」の字になっていて(下の写真)、それを少し斜め上から撮っているからです。 つまり翅を見る角度によって凹み方が違って見えるというわけです。
もちろん実際の翅は、1枚目の写真のように、左右対称です。
もうひとつ、この仲間は、壁などにとまるときには、頭を真上や真下に向けることなく、傾いてとまります( 上に書いたヒメノコメエダシャクの写真を見てください )。 これも星谷仁さんは対称性が察知されにくい姿勢だというわけですが、他の蛾も、壁にとまっている時に頭を真上や真下に向けているケースは少ないように思います。 他の多くの蛾も、対称性を崩すことを意識しているのでしょうか。
捕食者が虫を見つける際に対称性を手掛かりの1つにしているのか否かを確かめる実験もしてみたいものです。
私のblogでこの蛾を単にオオノコメエダシャクっと紹介するだけではなんだかもったいない気がします、
返信削除お腹を曲げて止まってる意味とかぜひ紹介したいです、リンクをお願いします。
リンク、どうぞどうぞ。
返信削除ただし、今はまだ 「そういうことも考えられる」 というレベルの話ですからね。