2015-03-30

マキノゴケの胞子体


 3月12日、堺市南区豊田でマキノゴケ Makinoa crispata が胞子体を伸ばしていました(上の写真)。 葉状体の縁は波状に縮んでいます。 3月24日に同じ場所を見に行くと、たくさんの胞子体が胞子を出していました(下の写真)。


 葉状体から成る蘚類は無く、マキノゴケは苔類です。 ツボミゴケ科のところで、多くの苔類の蒴は4裂すると書きました。 しかし・・・


 上は胞子を飛ばしたマキノゴケの蒴です。 茶色い糸くずのようなものは胞子を飛ばす助けとなる弾糸です。 写真のように、マキノゴケの蒴は1ヶ所で裂けるだけです。


 風の無い室内で、白いボードの上にまだ裂けていないマキノゴケの蒴を置き、自然に裂けるのを待ったところ、弾糸が出て下に胞子がたくさん落ちていました。 上は、その弾糸の出ている蒴を少し左にずらしたところです。 右が胞子で、緑色を帯びた黒っぽい色をしています。
 上で弾糸は胞子を飛ばす助けとなるものだと書きましたが、上の写真を見ると、弾糸の広がりと胞子の落ちている面積とが、ほぼ一致しています。 弾糸は胞子を絡ませて蒴の外へ運びますが、勢いよく胞子を撥ね飛ばすような運動をするわけでは無さそうです。 弾糸と共に蒴の外に出た胞子は、風に乗って遠くに運ばれるのでしょう。



 上は弾糸の顕微鏡写真で、丸いのは胞子です。 マキノゴケの弾糸では中央部にだけらせん状の帯が見られます。


 上は雌包膜でしょう。 この中にあった卵細胞は受精しなかったのか、胞子体には生長できなかったようです。

◎  マキノゴケの雄器や雌器の様子(12月の様子)はこちらに載せています。

 牧野富太郎博士は種子植物やシダ植物で多くの業績を残されていますが、コケ植物もたくさん採集されています。 マキノゴケの和名は、牧野博士を記念して命名されたものです。(詳しくはこちら)