2016-01-05

ビー・オーキッド

 このお正月、高槻市にあるJT生命誌研究館が発行している「生命誌ジャーナル」にあったビー・オーキッドの模型(紙製)を作って遊びました。


 ビー( Bee )はハナバチの仲間のことで、オーキッド( Orchid )は植物のランのことです。 ビー・オーキッドは花の形やにおいでハナバチのメスに擬態し、交尾目的でメスを求めて飛来するオスを引きつけ、花に来たオスの体に花粉塊をくっつけ、花粉を運んでもらおうとするランです。
 ハナバチにもいろんな種類がいますから、それぞれのビー・オーキッドは来てほしい特定のハナバチのメスに似るように進化しています。 写真はビー・オーキッドの一種である Ophrys apifera (の模型)です。 Ophrys apifera はヨーロッパ西部原産で、花期は4~5月です。
 なお、“本物”の Ophrys apifera の花は、この学名で検索すれば、英語ですが、いっぱいヒットします(それほどポピュラーな花です)。 例えばこちらは英語版の Wikipedia です。


 1枚目はゴチャゴチャしていてすこし分かりにくいので、1つの花だけを写したのが上です。 紙の模型であることもあって、特に蜂に似ているように見えないかもしれませんが、下のように見ると、たしかに蜂に見えてきます(ハチの真似をした花の模型にハチの名称をつけるのもどうかと思いますが・・・ 透明な翅は見えません)。 もっとも対象となったハチのメスがどんな模様なのかが問題ですが・・・


 ダーウィンはこの花とハチとの関係を観察したところ、特定の受粉バチは訪れず、多くは自家受粉をしていました。 この Ophrys apifera の場合は、環境の変化によって花が擬態していたハチが減り、しかたなく自家受粉するように進化したと考えられます。


 Ophrys apifera の多くの花は自家受粉するのですが、いろんな花の蜜を求めて飛び回っているヒゲナガハナバチの一種によって交配もしています。 もちろんこの時は花の模様は関係ありませんが、花が作るハチの性フェロモンに似たにおいは関係しているようです。



 ヒゲナガハナバチは花のずい柱の窪みに頭を突っ込んで蜜を吸います(上の写真)。 この時、花粉塊がハチの背中にくっつきます。
※ 粘着体と花粉塊との間にある柄の長さは違いますが、シュンランの花粉塊の様子はこちらに載せています。


 上は飛び去って行くヒゲナガハナバチで、しっかり花粉塊をつけられています。

 環境が変化し、受粉者が交代した後も擬態の歴史を残し、ヨーロッパの原野を彩っているビー・オーキッドの話でした。

※ ここに書いた内容は、「生命誌ジャーナル」(2015冬号:通巻87号)に書かれてある内容を参考にしています。

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