上は蒴をつけたフウリンゴケ
Bartramiopsis lescurii です。 多くの蒴は蓋に帽がついていますが、右上と左下には蓋も帽も取れた蒴があります。
フウリンゴケはスギゴケ科のコケです。 スギゴケ科の蒴の特徴として蓋の取れた蒴口は口膜で覆われていますが、和名はこの蓋の取れた垂れ下がる蒴が風鈴に似ているところからではないかと思います。
茎は高さ3~8cmで、下半部には葉がありません。 上は乾いた状態で、葉は乾くと強く巻縮します。 葉の長さは5mm前後です。
上は1枚の葉を顕微鏡で見たものです。 少し古い葉で汚れているうえに、片方の葉鞘部が折れ重なってしまいましたが・・・。 葉は細長く、縁にはほぼ全周にわたって歯があります。
①と②の部分を倍率を上げて撮った写真を下に載せます。
上は①の部分の拡大です。 葉鞘部の縁には数本の長い多細胞の毛が見られます。
上は②の部分の拡大です。 中肋腹面上には数列の薄板があって、上の写真はその薄板にピントを合わせています。 薄板の存在は葉の断面を見ればよく分かります(
こちら)。
上の写真では蓋の取れた蒴がたくさんあります。 口膜が蒴口を完全には塞がず隙間の見える蒴もあります。 胞子はこの隙間から散布されます。 下はこの隙間の比較的大きな蒴を深度合成したものです。
上の写真を見ると、口膜は中軸の頂部が円形に広がったものであることも納得できます。 なお、スギゴケ科の多くの種は短い蒴歯を持っているのですが、フウリンゴケの場合は、上の写真のように蒴歯はありません。
(2016.7.20-21. 北八ヶ岳)