2016-10-06

クロハツモドキのヤグラタケ


 上はクロハツモドキ Russula densifolia です。


 ひだを傷つけると、ゆっくりと黒変します。 似たクロハツはひだが疎ですし、ニセクロハツはひだを傷つけても赤褐色になるだけで黒変はしません。

 このクロハツモドキの上にヤグラタケ Nyctalis lycoperdoides (下の写真の白いキノコ)が育っていました。 白いモヤモヤとしたものはヤグラタケの菌糸です。


 キノコの仲間は光合成を行う植物のような独立栄養生物ではなく、食料となる有機物を外部に依存します。 多くのキノコは落ち葉や朽木などから有機物を得たり、植物の根に絡んで、そこから有機物をもらったり(=奪ったり)していますが、ヤグラタケはクロハツやクロハツモドキなどの体から有機物を得て育ちます。


 上の写真ではヤグラタケが大きく育ち、クロハツモドキは真っ黒になってしまっています。 そしてヤグラタケの傘の頂が茶色になってきていますが、これはヤグラタケの胞子が出て来ているからです。
 多くのキノコ(坦子菌類)は傘の裏で胞子を作りますが、ヤグラタケは胞子の作られる場所も変わっていて、傘の表に胞子が出てきます。


 上はヤグラタケの胞子です。 胞子の形も変わっていて、金平糖のようなたくさんの突起がみられます。 胞子の径は10~20μmほどです(上の写真の最小目盛は10μm)。


 上はよく育ったヤグラタケの傘の裏を撮ったもので、ひだはちゃんとあります。 念のため顕微鏡で調べてみましたが、ひだでは胞子は作られていませんでした。

 ヤグラタケはクロハツやクロハツモドキなどの傘の上で育ち、胞子を作り、この胞子が飛散して近くのこれらのキノコの上に落ちると、菌糸を伸ばし、子実体を作ります。 ではその年の季節に育つ最初のヤグラタケの胞子はどこから来るのでしょうね。 クロハツモドキなどが年中どこかに生えているとはとても考えられませんし、ヤグラタケの胞子が年中空中を漂っているとも考えられません。 クロハツやクロハツモドキなどのキノコの無い時期にヤグラタケがどこでどのように生き続けているのか、不思議です。 ヤグラタケの菌糸がクロハツなどの菌糸に寄生しているのでしょうか。

(2016.10.2. 堺市南区 茶山公園)

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