最近はこのブログでも顕微鏡で撮影したコケの写真をよく載せています。 観察会などでその撮影方法について質問されたりもしますので、私の方法について載せておきます。 といってもたいしたことをしているわけでもなく、顕微鏡の上にコンデジを載せているだけですが・・・(いわゆる「コリメート法」です)。
もちろん高画質の顕微鏡写真を撮るにはよくクリーニングされた解像度の良い顕微鏡レンズや調光可能なLED光源と高性能のコンデンサー等を供えた顕微鏡や撮像素子が大きく画像処理の優れた高性能のカメラが必要ですが、ここではこのブログに載せている程度の顕微鏡写真であれば、これくらいの装置と工夫で撮れることを紹介したいと思います。 なお、顕微鏡専用カメラは汎用性に欠ける分、機能のわりには高価ですし、画素数的にもコンパクトカメラの方が優れているものが多いように思います。
上はつい最近まで私が実際に使っていた顕微鏡とカメラです。 現在は3筒の顕微鏡を使っていますが、原理的には上の写真と同じですし、この写真の方が分かり易いので、この写真のケースについて、いくつかの項目に整理して、もう少し解説を加えることにします。
【 顕微鏡 】
最近の顕微鏡のほとんどは観察し易いように鏡筒が斜めになっていますので、カメラを顕微鏡の接眼レンズに密着させるためには、顕微鏡を鏡筒に固定するしくみを自作するなり三脚を使うなどの工夫が必要になります。 顕微鏡撮影では、シャッター速度が遅くなりますので、手持ちでカメラを接眼レンズに押し当てて撮ろうとすると、どうしても手振れが起きてしまいます。
写真のオールドスタイルの顕微鏡を購入するのは難しいかもしれませんが、もし入手可能なら、撮影にはお勧めです。 もちろんお金を出してもいいのなら、3筒(観察用の双眼+撮影用の直筒)の顕微鏡は撮影以外の面でもいろいろな長所がありますが、撮影用の直筒のついていない双眼顕微鏡は撮影にはお勧めできません。
※ 顕微鏡については、こちらで詳しく書いています。
【 カメラ 】
上の写真はオリンパスの TG-4 というコンパクトカメラですが、鏡筒の上にカメラを乗せるだけで撮ろうとするには、次の条件をクリアしたカメラが必要になります。
① レンズがカメラの中央にあること
レンズが片側に寄っている場合は三脚が必要になり、セッティングがめんどうです。
② インナーフォーカス(レンズが繰り出さない)カメラであること
レンズが繰り出されると不安定になり、カメラが落下する危険性があります。
③ レンズの径が顕微鏡の接眼レンズの径とほぼ一致すること
一致していない場合は横から光が入らないように何らかの工夫が必要になります。
TG-4 はこの3条件をクリアしていますので、カメラを顕微鏡の上に乗せ、(マクロモードではなく)通常の撮影モードを使用し、ズームで適度な大きさにして(そのままだと周辺部が真っ黒な丸い視野になってしまいます)撮ることができます。 いろいろなカメラで確かめたわけではありませんが、上の3条件をクリアできれば、他のコンパクトカメラでも撮影可能だと思います。 特に③は顕微鏡撮影時のコンパクトカメラの優位性で、レンズ交換式カメラでは、画質はいいのですが、顕微鏡撮影には鏡筒とカメラをつなぐアダプターが必要になります。
なお、シャッターボタンを手で押すと、その瞬間にほんの少しでもカメラが動く場合がほとんどで、これも手振れの原因になります。 私はセルフタイマーを使うことで、この問題をクリアしています。 ちなみに、一眼レフカメラではミラーの跳ね上げ時の振動が問題になりますが、コンパクトカメラではその心配もありません。
以上でとりあえずの顕微鏡写真は撮れるのですが、以下はより良い写真を撮るために・・・
【 光源 】
顕微鏡の光源を気にする人はそんなに多くないと思いますが、写真の出来栄えに大きく影響するのが光源です (私の知る範囲では、観察には十分な明るさでも撮影には不十分な光量で撮影されている方が多いように思います)。
顕微鏡撮影では、反射鏡による光ではどうしても明るさ不足になりますので、光源を使うことになるのですが、対物レンズを使い分ける場合、低倍率では観察に眩しすぎないように、高倍率では撮影時に明るさ不足にならないように、調光できる光源が欲しくなります。
従来、顕微鏡の光源としては、フィラメント式の電球が使われてきました。 この場合は変圧器をつなげば簡単に調光できるのですが、光の強度によって色が若干変わりますし、通常は赤っぽい光になってしまいます。 また熱が試料に与える影響も考慮する必要があります。
撮影には白色LEDが良いのですが、私の理解では、LEDの明るさ調節は原理的には人の目に認識できない範囲で点灯と消灯を繰り返すことで行われていて、減光した場合は人の目には認識できなくても、カメラではちらついてしまうことが多いように思います。 ちらつきを無くすには点滅周波数を高くすればよいのでしょうが、そのための装置が高額になるでしょう。
LEDの明るさを一定にして、距離を変えるのは現実的ではありませんし、減光フィルターを利用するのでは連続的に明るさを変化させられません。 光源をどのようにすれば良いのかは、現在の私も試行錯誤中です。 良い方法がありましたらお教えください。
【 写真の補正 】
デジタルカメラで撮影できるようになって、画像処理ソフトによるトリミング、明るさや色あいの補正などが容易になりました。 ちなみに私が使っているソフトは全てフリーソフトです。
通常の顕微鏡撮影では、背景が白色の場合が最も本来の被写体の色に近いはずです。 先に書いた光源の問題とも関係しますが、現在の私は、光源にフィラメント球を使い、次の方法で背景を白くするようにしています(写真によっては白くすることが不可能な場合もありますが・・・)。 その方法とは、(1)フィラメント球の光源に色フィルターを使ってできるだけ白色に近づけたうえで、(2)カメラのホワイトバランス機能を使用し、(3)撮った写真を画像処理ソフトで最終的に微調整するという3段階の補正を行っています。
(3)についてもう少し書くと、光の3原色はR(Red:赤)とG(Green:緑)とB(Blue:青)ですので、ソフトでRGBの度合いを調整して背景を灰色にし、そのうえで明るさとコントラストを調整して灰色を白色にしています。
画像処理に関係するソフトにはさまざまなものがあります。 もっといいソフトもあるでしょうが、ここでは私が以前から使っている使い慣れたフリーソフトを参考に載せておきます( Windows10 で使用しています)。
・ すぽいと君
マウスポインターのある位置のRGB情報を教えてくれます。 この情報を見ながらRGBの調整を行っています。
・ JTrim
画像レタッチソフトで、上記のRGB調整や明るさ・コントラストの調整、トリミングなど、最もよく使っているソフトです。
・ Pixia
ソフトの分類からするとペイントソフトになります。 写真に文字などを入れる場合によく使っていますが、ぼんやりした写真とは相性が良くないようで、写真データを読み込んでくれない場合があります。
・ GIMP2
非常に高機能なグラフィックソフトですが、その分立ち上がりも遅く、高機能すぎて初めて使用する場合は分かりにくい点も多いかと思います。