2018-01-31
ヒメトサカゴケ
明るい色のヒメトサカゴケ Chiloscyphus minor、普通種で、このブログでもこれまでに何度か載せています。 再度載せることにしたのは、群落の色からも無性芽からも芳香からもヒメトサカゴケに間違いないはずですが、
① ヒメトサカゴケの葉先は浅く2裂するのですが、1枚目の写真のように殆どの葉は2裂しているとは言えませんし、
② 平凡社の図鑑では生育場所は「樹幹や倒木、岩上など」となっていますが、育っていたのは2枚目の写真のように、溝の縁のセメントに接しているとは言え、ヒラドツツジの植え込みの下の土の上でした。
上は腹面から撮った顕微鏡写真です。 葉の先はほんのわずか凹んでいますが、こちらとはかなり異なります。
上は腹葉です。 幅は茎より太く2裂していることは今まで見てきたヒメトサカゴケと同じですが、裂片の側縁の様子はいろいろなようです。
上は葉身細胞です。
(2018.1.31. 堺市南区鉢ヶ峯寺)
2018-01-30
カラヤスデゴケの腹片
上はカラヤスデゴケ Frullania muscicola でしょう。 これまで何度か載せてきましたが、いつもどこがヤスデなのか不思議に思っていました。 しかし、上のように撮って大きな画面いっぱいにして見ると、ヤスデの大群がモゾモゾと迫ってくるように見えなくもありません。
それはともかく・・・
上はカラヤスデゴケを水に浸けて腹面から撮ったものですが、腹片がとても目立ちます。 もちろん腹葉もあるのですが、腹片よりもずっと薄い腹葉は水中では目立たなくなってしまいます。
上の写真では、袋状になった腹片から気泡が出てきています。 このようにして腹片の中にあった空気は次第に水に置き換わり、腹片は貯水にも役立つのでしょう。(以上、2018.1.19. 堺市南区豊田)
いずれにしても、カラヤスデゴケの腹片はとてもおもしろい形をしていますが、何度もカラヤスデゴケを観察したり調べたりしているうちに、この形のでき方が分かってきましたので、以下にまとめておくことにします。
上はいろいろな苔類の葉を並べた図で、全国農村教育協会発行の『校庭のコケ』p40の図を2段に変えて色をつけたものです。 上の図のように2裂していることが分からない葉もありますが、発生学的には茎葉体苔類の葉は2裂しているのが基本のようです。 赤く色をつけたところが発生学的には同じ起源て、苔類の腹片は、この2裂している葉の下片(赤い色の部分)が腹側に折れ曲がったものとして理解できます。
2枚目のカラヤスデゴケの写真の腹片は勾玉(まがたま)のような形に見えますが、こちらの顕微鏡写真から分かるように、これは上の図の下段右端の袋状の腹片がさらに変化したものです。 カラヤスデゴケでは、このような“勾玉”が目立つ腹片が一般的ですが、幼体などではこちらのように、上の図の下段左端のロバの耳状の腹片もよく見られます。
上は 2017.11.8.に宝塚市の武田尾にあったカラヤスデゴケの顕微鏡写真で(深度合成しています)、ほぼ中央に写っている腹片は袋状で、“勾玉”ができつつあります。
以上のことをまとめると、カラヤスデゴケの腹片の“ロバの耳”と“勾玉”の関係は下のようになるでしょう(私の原図で、腹葉は略してあります)。
2018-01-29
2018-01-28
ミカンワタカイガラムシの幼虫
2018-01-26
2018-01-25
フジウロコゴケ
流水中や湿った岩上などで見られるフジウロコゴケ Chiloscyphus polyanthus です。 コケサロンでいただきました(2018.1.23.撮影)。
全縁で円頭の葉は、丸みのある矩形で、葉の上部と基部の幅があまり変わりません。 上は腹面から撮っていますので、よ~く見れば小さな腹葉の存在が分かります。
上が腹葉です。 茎の幅より狭く、ほぼ中ほどまで2裂しているのですが、少し斜めから撮っていますので、浅く2裂しているように見えてしまっています。 時に側縁に1歯があり、上の写真でも右の側縁に歯があります。 腹葉は葉と合着する傾向にあり、上の写真でも左側でその傾向がみられます。
葉身細胞は薄膜でトリゴンはありません。 小粒よりなる楕円体の油体があるのですが、上の写真では、油体が消えてしまったのか葉緑体に紛れてしまったのか、確認できませんでした。
◎ フジウロコゴケはこちらにも載せています。
2018-01-24
ヒラキバヤスデゴケ
樹幹にモコモコしたコケがついていました。
葉は密で、枝もよく重なっています。
上は腹面から見たところで、背片と腹片のつながりが短いことや、腹葉の様子などからヤスデゴケ属であることが分かります。 腹片がどのような袋状の形態になるのか知りたいところですが、仮根が未発達で観察し易い枝先の腹片は、上の写真のように開いたままでした。 腹片の先は急に細くなって糸状に伸びているようです。
腹葉は茎の約4倍幅で、中央の切れ込みは浅く、側縁に鋸歯があります(上の写真)。
このような腹片や腹葉の特徴などから、写真のコケはヒラキバヤスデゴケ Frullania monocera のようです。
上は葉身細胞です。 油体は楕円体で、微粒の集合です。
(2018.1.19. 堺市南区豊田)
2018-01-22
コツボゴケ
コツボゴケのつもりで写真を撮っていたのですが、葉形や葉身細胞の大きさなどから、もしかするとヤマトチョウチンゴケかもしれないと思うようになり、当初のタイトルは「ヤマトチョウチンゴケ?」としていました。 蘚類の専門家であるK氏にみてもらったところ、やはりコツボゴケ Plagiomnium acutum のようですので、タイトルを変更し、本文も少し変えました。
高野山の石碑の上で育っていた雪中のチョウチンゴケ科、蒴柄は長く、匍匐茎と直立茎があり、後に書くように葉縁の歯は単生ですので、ツルチョウチンゴケ属 Plagiomnium には間違いないと思うのですが・・・
地表を匍匐する茎から直立茎が出て、直立茎の上部から新しい匍匐茎が出ています。
上の直立茎の長さは3cmほどです。 写真は略しますが、苞葉の長さは6mmほどありました。
葉は葉先が鋭頭で、葉縁の歯は葉の上半部のみにあります(上の写真)。 このことから、写真の種はツボゴケ、コツボゴケ、ヤマトチョウチンゴケのいずれかでしょう。 葉は倒卵形で、葉先から1/3ほどの所が最も幅広くなっていますので、葉形からはヤマトチョウチンゴケ P. japonicum のようにも思われますが、それにしては少し小さいようですし、蒴柄はしばしば1茎に3本くらいつくという平凡社の記載のような傾向も見当たりません。
上の写真では中肋が葉先に届いていませんが、下は中肋が葉先に届いています。
平凡社の図鑑ではツボゴケやコツボゴケの中肋は葉先に届き、ヤマトチョウチンゴケの「中肋は葉先に届かない。」となっています。
葉身細胞の長さは葉の上部と下部で違っています。 上は葉の上部で、下は葉の下部です。
平凡社の図鑑によると、葉身細胞は六角形~横広の六角形で、長さは、コツボゴケは 20μm以下(ときに25μm)、ツボゴケは 15~30(~35)μm、ヤマトチョウチンゴケは30~50(~70)μmとなっています。
平凡社の図鑑によると、ヤマトチョウチンゴケの歯は2~3細胞からなる大型の鋭い歯となっていますが、多くの歯は上のように1細胞からなっているように見えます。
(撮影:2018.1.10.)
◎ コツボゴケはこちらにも載せています。
高野山の石碑の上で育っていた雪中のチョウチンゴケ科、蒴柄は長く、匍匐茎と直立茎があり、後に書くように葉縁の歯は単生ですので、ツルチョウチンゴケ属 Plagiomnium には間違いないと思うのですが・・・
地表を匍匐する茎から直立茎が出て、直立茎の上部から新しい匍匐茎が出ています。
上の直立茎の長さは3cmほどです。 写真は略しますが、苞葉の長さは6mmほどありました。
葉は葉先が鋭頭で、葉縁の歯は葉の上半部のみにあります(上の写真)。 このことから、写真の種はツボゴケ、コツボゴケ、ヤマトチョウチンゴケのいずれかでしょう。 葉は倒卵形で、葉先から1/3ほどの所が最も幅広くなっていますので、葉形からはヤマトチョウチンゴケ P. japonicum のようにも思われますが、それにしては少し小さいようですし、蒴柄はしばしば1茎に3本くらいつくという平凡社の記載のような傾向も見当たりません。
上の写真では中肋が葉先に届いていませんが、下は中肋が葉先に届いています。
平凡社の図鑑ではツボゴケやコツボゴケの中肋は葉先に届き、ヤマトチョウチンゴケの「中肋は葉先に届かない。」となっています。
葉身細胞の長さは葉の上部と下部で違っています。 上は葉の上部で、下は葉の下部です。
平凡社の図鑑によると、葉身細胞は六角形~横広の六角形で、長さは、コツボゴケは 20μm以下(ときに25μm)、ツボゴケは 15~30(~35)μm、ヤマトチョウチンゴケは30~50(~70)μmとなっています。
平凡社の図鑑によると、ヤマトチョウチンゴケの歯は2~3細胞からなる大型の鋭い歯となっていますが、多くの歯は上のように1細胞からなっているように見えます。
(撮影:2018.1.10.)
◎ コツボゴケはこちらにも載せています。
2018-01-21
ケチャタテの一種の羽化
上は羽化したばかりのケチャタテの一種でしょう。 ヤツデの葉の裏にいました。
上の写真では翅が短く見えますが・・・
翅は途中から垂れ下がっているため、上から見ると短く見えます。
(2018.1.15. 堺市南区槇塚台)
2018-01-19
ミズムシ2種
今回は「ミズムシ」と呼ばれる生物についてです。 白癬菌による感染症の俗称は通常は「水虫」と漢字表記されますので除外するとして、ここでは全く別の2種類のミズムシをとりあげます。
上は水生昆虫で、カメムシ目ミズムシ科の一種です。(撮影 : 2017.7.11. 堺自然ふれあいの森)
ミズムシ科の昆虫は日本では 30種ほどが知られています。 水生カメムシ類の多くが獲物を捕らえて体液を吸い取る捕食者であるのに対し、ミズムシは口吻が短く、多くは藻類などを食べています。
上は昨日載せたアオハイゴケについていたワラジムシ目のミズムシ Asellus hilgendorfi です。 昨日の2枚目の写真にも写っています。 ワラジムシやフナムシに近縁ですが、淡水中に棲むのは本種だけのようです。 アオハイゴケにたくさんついていましたが、コケを食べるというよりは、コケの古くなって腐りかけている葉やデトリタスを食べているのでしょう。
上は水生昆虫で、カメムシ目ミズムシ科の一種です。(撮影 : 2017.7.11. 堺自然ふれあいの森)
ミズムシ科の昆虫は日本では 30種ほどが知られています。 水生カメムシ類の多くが獲物を捕らえて体液を吸い取る捕食者であるのに対し、ミズムシは口吻が短く、多くは藻類などを食べています。
上は昨日載せたアオハイゴケについていたワラジムシ目のミズムシ Asellus hilgendorfi です。 昨日の2枚目の写真にも写っています。 ワラジムシやフナムシに近縁ですが、淡水中に棲むのは本種だけのようです。 アオハイゴケにたくさんついていましたが、コケを食べるというよりは、コケの古くなって腐りかけている葉やデトリタスを食べているのでしょう。
2018-01-18
水中のアオハイゴケ
高野山奥の院への参道の一角、墓石に囲まれ、湧き出る地下水を利用した?手水鉢がありました(上の写真)。 小さな小さなトレビの泉のように硬貨が投げ入れられています。
水中に繁茂しているコケが気になって近づいてみると・・・
寒い冬の冷たい水の中で光合成を行い、盛んに気泡を発生させています。 葉を見ると、ヤナギゴケやカワゴケなどのように細長くありません。 葉形からアオハイゴケかと思いましたが、私がこれまで見たアオハイゴケの群落は、渓流のすぐ近くであったり、水飛沫のかかる岩の上であったりで、少なくとも群落の大部分は水中に没してはいませんでした。
気になったので、手水鉢の掃除を少し手伝うという勤労奉仕精神で (^_-; このコケを少し持ち帰り、顕微鏡観察すると・・・
どの葉もよく汚れていましたが、葉の縁には全周に小歯があり、やはりアオハイゴケ Rhynchostegium riparioides の葉でした。 平凡社の図鑑で確認しても、「渓流近くのぬれた岩上にしばしば暗緑色の大きな群落をつくる。」とあり、水中のことは書かれていないのですが、間違いないでしょう。
汚れ方も気になって調べてみると・・・
葉についているものの大部分がイチモンジケイソウ Eunotia sp. でした。 これも葉が長く水中にあったことの証拠になるでしょう。
(2018.1.10.)