2018-06-22

コガタスズメバチの巣の観察記録

 今日、コガタスズメバチに刺されました。 コガタスズメバチは比較的おとなしいスズメバチですが、庭木を剪定していて、コガタスズメバチの巣に気付かず、すぐ近くの枝を切ってしまったようです。 以前コガタスズメバチの巣の観察記録を載せていて、この記録と比較すると、巣の形態変化も完了間近で、働きバチが増えつつある時期だったようです。 これを機会に、Part1の 2013.8.6-7.に載せていた上記観察記録を、こちらに引っ越しさせます。 なお、引っ越しに際しては、元の文をほんの少し追加および修正しています。
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 コガタスズメバチの1つの巣の様子を、2013年5月1日から8月5日まで、続けて観察してきましたので、その結果をまとめておきます。

● 5月1日


 コガタスズメバチが巣を作りかけているところをみつけました。 このコガタスズメバチは越冬した女王バチでしょう。
 既に六角形の育房が並ぶ巣盤と、後にこの巣盤の外側を覆うことになる外皮が屋根のように作られています。
 コガタスズメバチは比較的おとなしいスズメバチで、刺激を与えなければ攻撃されることはほとんどありません。 そのまま巣作りの様子を継続観察することにしました。

● 5月3日


 上の写真は下方から撮っています。 屋根のような外皮は、かなり大きくなっています。 新しく付け加えられたばかりの所は、まだ乾いていなくて、黒く光っています。 巣盤の育房は5室で、うち1室には既に卵が産み付けられています。


 最初の働きバチが生まれるまでは、巣作りも、産卵も、幼虫の世話も、全て女王バチ1頭での作業です。 女王バチも疲れることでしょう。 昼間でも時々休んでいました。 休む時は、上のように巣盤を吊り下げている柄の部分に体を巻きつけるようにしていました。

● 5月7日


 育房は13室になりました。 外皮も巣盤の横まで延びてきました。 巣は2色になってきました。
 スズメバチ類の巣は樹皮を噛み砕き、唾液と混ぜたものを材料として作られます。 唾液に含まれるタンパク質が接着剤の役割をしているようですが、色は樹皮の材料で決まります。

● 5月10日


 巣盤は外皮にすっぽりと覆われてしまいました。 もう育房の様子は見ることができません。

● 5月13日


 巣の出入り口が下に伸びています。 このような徳利を逆さにしたような特徴的な巣を作るのは、コガタスズメバチと、八重山諸島に分布するツマグロスズメバチだけです。
 巣の出入り口の細い部分は、この後、写真よりももう少し長くなったのですが、いちばん長くなった状態を撮ってやろうとしているうちに、油断して撮るチャンスを逃してしまいました・・・。

● 6月5日


 働きバチが誕生したようです。 上の写真で下に1頭と、左上にも1頭います。 働きバチは下に長く伸びた出入り口を壊しています。 下に長く伸びた出入り口は、外敵の侵入を防ぐには役立ちますが、複数で出入りするには不便だということでしょうか。 たしかにこの細い部分で2頭がすれちがうのは難しそうですね。

● 6月6日


 巣が拡張されはじめています。 外皮の外側にさらに外皮が作られています。

● 6月8日


 巣はどんどん変化していきます。 出入り口は斜め下になりました。 外皮の付け加えも進行しています。

● 6月30日


 巣の出入り口は下から横に変わりました。 外皮は何層にもなっています。 外皮の内側は順次壊して内部のスペースを拡げますが、何層かは残されていて、その隙間は空気室となっています。 空気室の存在で外皮の断熱効果が大きくなっているようです。

● 8月2日
 上の状態から1ヶ月過ぎました。 この間、巣はどんどん大きくなり、働きバチの数も増えてきました。


● 8月5日


 巣の出入り口にはいつも見張り役ががんばっています。 上の写真で右下の蜂の翅が無いように見えますが、翅を激しく振動させて、巣の中に空気を入れています。 中にどれくらいの数の個体がいるのかは分かりませんが、外皮の断熱効果だけでは、内部の温度が上がりすぎるようです。
 下は翅の振動が分かる角度から撮ったものです。


 終わりは突然訪れます。 個体数が増えて巣への出入りが頻繁になり、巣の存在が広く知られるようになってしまいました。 そして、市役所への通報が行われ、巣は除去されてしまいました。
 秋の新女王と雄バチの誕生を見たかったのですが、もし誰かが刺されても私が責任を取るわけにもいきませんから、止むを得ません。

 なお、例えばドイツでは、このようなスズメバチの巣の駆除は法律で禁止されているそうです。 スズメバチも生態系の一員であり、女王バチを中心とするスズメバチ一家を全滅させることは、その周囲の生態系にどのような影響が及ぶかもしれない、ということのようです。 家の庭など、どうしても危険な場合は市役所に連絡すれば無料で巣を移動させてくれますが、ハチを殺しはしないとのことです。 ちなみに、巣を勝手に駆除してしまえば、5万ユーロ以下の罰金または5年以下の懲役(2018年6月現在)とのことです。

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Part1にいただいていたコメント:

たいへん貴重な記録です。逆さ徳利から球形に変わるのが不思議でしたが、よくわかりました。
ありがとうございました。
ところで、空白の3週間で、筒状部分は切り取ってしまうんですか? 
外皮を張り替えるときは、古い外皮をそのまま残すのでしょうか。それだと大きくなることはないと思うのですが……
それにしても駆除されてしまって、残念です。
  投稿: sizenkansatu | 2013年8月 9日 (金) 22時29分

逆さ徳利の筒状部分は、先端から(=下から)順に崩していっていました。下に何も落ちていないようなので、再利用しているのではないかと思います。
外皮は古い外皮の外側に外皮を付け加え、何層かになった段階で、内側の外皮を、逆さ徳利の筒状部分同様に崩しているのだと思います。ただし、これは観察できません。
出入り口の下から横への移動も同様で、穴の上方の外皮を崩しながら穴の下方に外皮を作り、穴の大きさを保ちながら移動させていました。
いつも見ていただいているようですね。ありがとうございます。

  投稿: そよかぜ | 2013年8月 9日 (金) 23時08分


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