2018-10-12

顕微鏡観察のススメ

 コケの愛好者増加などで、私の近くでも顕微鏡を購入しようかどうかと迷っている人が増えてきたように思います。
 顕微鏡があれば、今まで見ることのできなかった別の世界が広がります。 そして、顕微鏡の性能の進歩はカメラほど速くはないので、一生ものとして使える可能性大です。 お子さんやお孫さんのおられる家庭ならば、一家で楽しむのもいいでしょう。

 この記事を書く気になったのは、数千円で最高倍率 1,000倍の新品の顕微鏡を購入しようとしている人の話を聞いたからです。 もし顕微鏡の購入目的がコケなどの観察であれば、これは止めた方がいいでしょう。
 後に書くように、電子顕微鏡は別として、顕微鏡には2種類あって、透過光で見る生物顕微鏡(いわゆる普通の顕微鏡:以後「顕微鏡」と書いてある場合は、これを指すことにします)と反射光で見る「実体顕微鏡」があるのですが、顕微鏡の倍率は、簡単にいくらでも上げる事ができます。 しかし、写真を印刷する場合にいくらでも大きな印画紙に印刷できるのと同様に、像はどんどんぼやけてきます。 大切なのは倍率ではなく、分解能です。 このことは光学顕微鏡であろうと電子式顕微鏡であろうと変わりません。
 顕微鏡の原理は、対物レンズで作った実像を、接眼レンズで虚像として拡大して観察するしくみです。 要は対物レンズでいかに細部まで鮮明な実像を作れるかです。 接眼レンズの倍率を上げれば簡単に拡大できます。 安価で高倍率をうたっている顕微鏡はこの方法を使っています。
 実用的な顕微鏡の値段は、カメラとほぼ同じと考えて良いでしょう。 カメラにもコンパクトカメラもレンズ交換式の高級カメラもありますが、実用的な顕微鏡の値段は2~3万円から数十万円でしょう。 この違いは、対物レンズの光特性の違いや、光源の違いや、単眼(片目で観察)か双眼(両目で観察)かの違いなどいろいろあって、もちろん高価な顕微鏡の方がよく見えるのですが、この違いを詳しく書き出すとキリが無いので止めておきます。 カメラに例えるならコンパクトカメラにするか高級カメラにするかに似た感覚でしょうか。
 結論的に書けば、新品で実用的な顕微鏡の購入を考えるなら、JIS規格またはDIN規格(ドイツ工業規格)の製品(価格は最も安いものでも2~3万円します:以下、これを「安価な顕微鏡」と書きます)をお勧めします。 もちろん中古品なら、もっと安く入手できますが、対物レンズに傷が無いか、カビがきていないかの確認は必要でしょう。
 安価な顕微鏡の場合、付属の対物レンズは x10 と x40 の場合が多いのですが、コケを観察する場合は、x4(接眼レンズの倍率がx10として、総合倍率 40倍)程度の対物レンズがあると、とても便利です。 もちろん上記規格の顕微鏡であれば、対物レンズはいくらでも別途購入可能ですし、倍率の低いレンズは安価です。 また、高価な顕微鏡の場合は x100の対物レンズがついてくると思いますが、コケの観察で x100の対物レンズを使用することは、まずありません。 ちなみに、私が使っている対物レンズは、x4、x10、x20、x40 の4種類で、接眼レンズは x10 のみです。

 実体顕微鏡のことも少し書いておきます。 顕微鏡は下から光を当てて観察対象物を透かして見るのに対し、実体顕微鏡は上から(=観察する側から)光を当てて、観察対象物の表面を見ることになります。 原理的にはルーペに近いもので、倍率もそんなに高くはなく、多くは総合倍率で20倍か40倍程度で、いくら高い倍率でも、せいぜい 100倍までです。 しかしあればとても便利です。 ルーペよりも詳しく観察できますし、何よりも実体顕微鏡下で作業ができます。 ルーペなら片手でルーペを持ち、もう片手で観察対象物を持てば両手が塞がります。 私は観察に用いる以外にも、顕微鏡写真を撮る前のゴミの除去や葉などの断面作成などを実体顕微鏡を覗きながらやっています。
 作業をすることを考えれば、立体的に見える双眼で、視野が広く明るく見えるものが良いのですが、そうなるとレンズが大きくなって値段も高くなり、重くもなります。 しかし重いと、ちょっと触れただけでは簡単に動きませんから、その下での作業はとても楽になります。 また、倍率が簡単に変えられるズーム型の実体双眼顕微鏡はとても便利ですが、高価になり、最も安価なものでも6万円ほどします。

◎ 顕微鏡写真の撮り方についてはこちらをご覧ください。 なお、顕微鏡写真で深度合成を行うには、マニュアルフォーカス機能がついたカメラ( TG-5 など)が必要になります。

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