2019-06-18
ヒメミノゴケ
オーバーハングぎみの岩に張り付いていたヒメミノゴケ Macromitrium gymnostomum です。
乾くと上のように葉が巻縮します。
ミノゴケと比較してみました。 上の写真は上がミノゴケ(2018.8.29.堺自然ふれあいの森にて採集)、下が本種です。 長く這った茎から出た短い枝に多くの葉がついていることも、その多くの葉が乾くと巻縮して球状に集まることもよく似ています。
乾いた状態では、上の写真のように、本種の方が少し小さく見えます。 しかし、下の写真のように湿らせると・・・(上の写真と下の写真は同じ倍率です。)
上は湿った状態での比較です。 ミノゴケの枝葉は舌形で、本種の枝葉は狭披針形と、葉形は異なります。 しかし、ミノゴケの葉先が腹側に曲がっていることもありますが、見た目の葉の長さは、ほとんど変わりません。
平凡社の図鑑では、枝葉の長さは 1.3~2.4mmとなっていて、上の写真の枝葉もその範囲内です。
上は枝葉です。 中肋は葉先に達しています。 葉身細胞は丸みのある方形~六角形で、多くのパピラがあって暗く、葉の基部の細胞は線形で、パピラは見られません。
ヒメミノゴケは無性芽をつけます。 上は葉と並んだ無性芽です、無性芽を形成しているのは、葉身細胞よりかなり大きな細胞です。 写真の無性芽は短い方で、これの3倍ほどの長さの無性芽がたくさん見られました。
この無性芽は葉身上に形成されます。 無性芽の始原細胞は葉身細胞内に内生的に発生し、それが葉身細胞外に伸長して糸状の多細胞性無無性芽となります(伊村・畦,1986)。 このような内生無性芽は、蘚苔類では非常に稀です。
上は 伊村・畦 からお借りした図で、葉の断面から無性芽が生じてくる様子を示しています。 私もこのような所を写真に撮ってやろうと、採集してきたものをいろいろ探してみました。 しかし、時期的なものか、無性芽はとてもたくさん落ちているのですが、葉上に作られている所はとても少なく、下のような写真を撮るのがやっとで、そこを狙って葉の切片をつくることはできませんでした。
(2019.6.12. 神戸市北区 道場)
【参考文献】
伊村智・畦浩二:ヒメミノゴケ(タチヒダゴケ科・蘚類)の内生無性芽について.植物研究雑誌61(2),1986.
◎ ヒメミノゴケの蒴の様子はこちらに載せています。
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