2020-04-17

ヤマトサンカクゴケ


 錆びたガードレールについていた上の写真のコケ、黄緑色で、やや光沢があります。 以下の観察の結果はヤマトサンカクゴケ Drepanolejeunea erecta でした。


 上の写真では葉と葉の間に入った水と空気との境が光って少し分かりづらくなっていますが、湿らせると葉が立ちあがってきました。 種小名はこのことを言っているのでしょうか?


 背片の長さは 0.2~0.4mmです。 和名の「三角」は、この属に分類されている種はほぼ三角形の背片を持つものが多いからですが、本種の背片は卵形で円頭です。


 顕微鏡で(=透過光で)観察すると、腹片が楕円形であることがよく分かります。 腹片は背片の(1/2~)1/3の長さです。


 背片の基部には1(~2)個の眼点細胞があります(上の写真)。 茎には仮根が多く、上の写真の葉にもくっついてきています。
 上のような倍率では背片と腹片は重なって見分けが難しいのですが、倍率を上げると被写界深度が浅くなり、見分けることができるようになります。 下の写真は上の写真の左側の葉の赤い四角で囲った部分を拡大して腹片にピントを合わせた写真です。


 この倍率ですと、腹片にピントを合わせると背片はボケるので、両者の区別が容易になります。 腹片の第1歯(歯牙)は「く」の字または「へ」の字で、第2歯は不明瞭です。 透明細胞は歯牙のキールと反対側の縁にあります。
 上のことを確認するために、別の葉で撮った写真を、もう1枚、下に載せておきます。


 上の写真では透明細胞が小さく分かりづらくなっていますが、これくらいの透明細胞の方が多いようです。


 上は腹葉です。 腹葉は茎葉の2~3倍幅で、1/3までV字形に2裂し、裂片は三角形です。


 葉身細胞は、トリゴンは大きく、薄壁で中間肥厚しています(上の写真)。 油体は楕円形、微粒の集合で眼点が見られます。



 上の2枚は茎の断面です。

(2020.3.3. 屋久島)

◎ ヤマトサンカクゴケはこちらにも載せています。

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