2021-02-27

冬を越したヌルデシロアブラムシ?

  ヌルデシロアブラムシ Schlechtendalia chinensis は、春~秋はヌルデに虫えいを作って暮らし、冬季はチョウチンゴケの仲間に寄生し冬を越します(こちら)。
 昨年の春、Oさんがコツボゴケ(チョウチンゴケ科)にいたアブラムシをFacebookに載せられ、ヌルデシロアブラムシかもしれないことを伝えると、観察を継続されました(こちら)。
 昨年の12月に、そのOさんから、アブラムシが期待できる場所のコツボゴケを送っていただきました。 到着したコツボゴケを調べてみたところ、何も見つからなかったのですが、越冬体制に入って動かない小さな生物がいたとしてもみつけるのは困難で、コツボゴケを密閉した容器に入れてテラリウムとして室内で育てていました。 暖かくなるにつれ、ミドリハシリダニ(多数)、マダニ(1)、ハムシの一種(1)などがテラリウムの壁で動いているのが確認できました。 そして、2月23日、テラリウムの中にアブラムシがいることをみつけました。

 上がそのアブラムシです。 1枚目はテラリウムの壁越しに、2枚目は直接撮っていますが、飛ばれるといけないので、数枚の写真を撮って、すぐにテラリウム内に戻して蓋を閉めました。
 撮った写真を見ると、上に載せたOさん撮影のアブラムシとは触角の長さが異なり、別種だと思われます。 どちらがヌルデシロアブラムシなのか、きちんと調べるための資料が手元に無いのですが、今回のアブラムシは、コツボゴケで越冬したことは間違いないでしょう。 また1枚目の写真で、前翅の、翅をたたんだ状態では下に位置する縁紋が、翅端まで長く伸びて後縁が凹んでいるのは、この属の特徴を示しています。 体長を写真から測定すると、1.2mmでした。

 その後、写真を撮り直そうと、アブラムシがテラリウムの壁面にいるのをみつけては外に出そうとしたのですが、いつもポトリと落ちてしまい、コケに紛れて分からなくなります。
 2月26日、翅が露に濡れてテラリウムの壁面にくっついていたのを幸いに、取り出すことに成功しました。 かなり弱っているようで、飛ぶ元気も無さそうで、安心して撮影できると思っていると・・・

 カメラの前で子を産みました(上の写真)。 このアブラムシがヌルデシロアブラムシだとすると、本来は飛び立ってヌルデについた後に産むはずが、閉じ込められていて限界に達していたのでしょう。
 この写真を撮るセッティング中に、もう1頭の子を確認していて、少なくとも2頭以上は産んだことになりますが・・・

 注目したいのは親虫の出産後の腹部で、ペチャンコに凹んでしまっています。
 なお、上の写真に写っているコツボゴケの葉がみごとに食べられていて中肋しか残っていませんが、これはたぶんハムシの一種のせいで、このことは別の機会に書く予定です。

 上は腹面からです。 コツボゴケから吸汁していた口吻がよくわかります。

 上は幼虫で、体長は 0.4mmです。 生まれてしばらくは動きませんでしたが、25分後には元気に動き回っていました。

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