2021-07-24

ムラサキヒシャクゴケ

 

 秋田県・乳頭温泉郷の標高 650m付近の渓流の中に、上の写真のようなコケがありました(撮影:2021.7.8.)。 水のpHは測定していませんが、少し硫化水素のにおいがしたように思いますので、酸性だったかもしれません。

 植物体の古くなった所は赤みを帯びています。 葉は背片と、それより大きな腹片からなっているようで、ヒシャクゴケ科のコケのようです。
 上は背面から撮っていますが、背片と腹片がぴったりくっつき、葉と葉も密に重なってくっつきあっています。 これらは扁平になって水流に耐えるための姿でしょうが、背片と腹片の間に水が入り込んでいることもあって、とても分かりにくくなっています。 しかし乾かすとくっつき合ったまま縮れますので、よけいに分かりにくくなります。

 上の写真は、上は腹面から、下は背面から撮っています。 茎の先の方についている大きな葉は、腹片の長さは 1.8mm、背片は腹片の約 1/2の大きさですが、茎の下方に向かうにつれて葉は小さくなり、背片と腹片の大きさの差も次第に小さくなっています。 前者の葉は1枚取り外すのが困難で、下の写真は後者の葉です。

 キールはわずかに弓形に凹んでいます。

 腹葉だけを剥がしてみました(上の写真)。 細胞は葉縁付近から葉の基部に向かうにつれて次第に大きくなっています。

 上は葉のほぼ中央の葉身細胞です。 やや厚壁でトリゴンは小さく、球形~卵形の油体が5~10個ほどあります。

 Scapania(ヒシャクゴケ属)は似たものが多くて難しいのですが、水流中にあったことから、ムラサキヒシャクゴケ Scapania undulata だろうと思います。 本種は色・形ともに変異の大きい種のようです。

◎ ムラサキヒシャクゴケはこちらにも載せています。


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