2021-07-30

トサカゴケ(胞子体と関連器官を中心に)

 

 いろいろなコケに混じってトサカゴケ Chiloscyphus profundus がありました。 あちこちに蒴も見えます。

 育っていたのは秋田県・乳頭温泉郷のスギの根元の樹皮上で(上の写真)、スギは雪のために根曲りになっています。 幹の根元の樹皮は、水分をたっぷり含み、朽木のような手触りになっていました。

 上は腹面から撮っています。 ゴミが多くて分かりにくくなっていますが、腹葉は大きく2裂して側歯も発達しています。

 上は葉身細胞です。 トリゴンは小さく、楕円体で小粒よりなる油体があちこちにあります。

 植物体についてはこちらにも載せていますので、観察を胞子体関係に移します。

 上の写真では胞子体はまだ花被の中で保護された状態で、花被の壁をとおして黒く見えています。 花被は三角柱形で、口部は広く、鋸歯状となっています。
 本種は雌雄同株で、平凡社の図鑑では「雄苞葉は花被の直下につき,背縁基部に裂片状の返しがある。」と書かれています。 雄苞葉や裂片状の返しと思われる所を上の写真に書き込んでみました。 なお、雄苞葉の内側には造精器が作られるはずですが、胞子体がこのように育っている時期では遅すぎるようで、確認できませんでした。
 上の写真では裂片状の返しをはっきり撮りたくて、少し強引に横向きにしたため、背面と腹面の関係が分かりにくくなっています。 裂片状の返しが雄苞葉の背縁基部にあることを確認したく、胞子体が成熟したもので撮り直したのが下です。

 背面からだと裂片状の返しの存在は見分けにくくなりますが、背面にあることは分かります。 胞子体が成熟して配偶体は白っぽくなってしまっています。
 花被は茎(か長い枝)に頂生しています。 上の写真では蒴が花被から少し出ていますが、この蒴を調べたところ、胞子を出し終えていました。 蒴は花被から外にあまり伸び出さないようです。

こちらには飼育条件下で蒴柄が長く伸びた本種を載せています。 蒴柄の長さは条件次第でかなり変化するようです。

 上も胞子を出し終えている蒴ですが、蒴を横から見ると楕円体です。

 上は胞子を出している蒴を上から撮っています。 蒴は4裂しています。

 上は胞子と弾糸です。

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