2022-02-14

クダアザミウマ科ツノオオアザミウマ属の一種

 下は 2014.1.31.に採集し、Part1の2014.2.11-12に載せていたものをまとめた引っ越し記事です。

 写真はアザミウマ目クダアザミウマ(有管)亜目クダアザミウマ科ツノオオアザミウマ属 (Bactrothrips) の一種だと思います。 体長は 4.8mm、ヤツデの枯葉にいました。
 冷蔵庫で冷凍死させて深度合成しようとしたのですが、1日半ほど冷凍庫に入れっぱなしにしておいても、しばらくすると動きだしました。 その時の冷凍庫の温度を赤外線温度計で測定してみると、虫を置いたあたりの温度は-10℃ほどでした。 こんなに低温に強いとは・・・。
 というわけで、今回は深度合成を諦め、通常撮影です。

 ツノオオアザミウマ属は前にも載せています (こちら) ので、今回は腹側からも撮影してみました。

 上は頭部付近を拡大したものですが、胸部に近い場所で赤っぽい所が口です。 口と眼はずいぶん離れていて、ショウリョウバッタオンブバッタの顔を連想しました。
 上の写真では脚の先端にも注目です。 歩行時に何かに引っ掛けるような爪は見当たらず、風船のような膨らみが見られます。 この部分でくっついて歩行しているようです。

 ところで、Hepotaさんのブログに、岡島先生によるBactrothirips属の検索表が紹介されています(こちら)。 この検索表 (Hepotaさんのブログより下に引用:青字の部分) でこのオオツノアザミウマの同定を試みてみました。

Bactrothirips属
大型の種で、常に長翅型。雄の第6腹節背板側部に1対の角状の突起がある。
近縁のMegalothirips属とは小腮刺針が短く、左右の刺針が広く離れることで容易に区別できる。
主に広葉樹の枯れ葉に生息し、次の7種が分布する。

1. 脛節の大部分は暗褐色で、後脛節は基部と先端部のみ黄色みを帯びる … 2
 - 脛節は黄色と暗褐色に色分けされ、後脛節の少なくとも先端 1/3 は黄色みを帯びる … 3

2. 複眼は腹面で後方に伸びる。本州;台湾に分布するが、やや局地的で、おそらく西南日本に広く分布するものと思われる。
アラカシの枯れ葉に限って生息するようである。
体長:雌 4.1-6.0mm 雄 3.8-5.4mm … B. flectoventris Haga & Okajima

 - 複眼は腹面で後方に伸びない。本州・九州(対馬)に分布するが、前種同様西南日本に広く分布するものと思われる。
本種もアラカシの枯れ葉に限って生息するもののようで、本州では全種に混じって採集されることが多い。
体長:雌 4.1-5.9mm 雄 4.7-6.3mm … B. carbonarius Haga & Okajima

3. 中脛節の先端1/3以上は黄色みを帯びる … 4
 - 中脛節の大部分は暗褐色、基部と先端部のみ黄色みを帯びる … 6

4. 前胸の後側板副刺毛はよく発達し、後側板刺毛のほぼ半分の長さ;
触角第3・4節の先端膨瘤部は淡褐色を呈し、明らかに第2節よりも色彩は淡い。
本州・九州(対馬)・琉球列島(奄美大島・沖縄本島・石垣島);
台湾に分布し、西南日本に広く分布するものと思われる。
アカガシの枯れ葉に限って生息するようである。
体長:雌 4.8-6.3mm 雄 4.1-5.8mm … B. Pictipes Haga & Okajima

 - 前胸の後側板副刺毛は短く、少なくとも後側板刺毛の1/3以下の長さ;
触角第3・4節の先端膨瘤部は暗褐色を呈し、第2節とほぼ同色 … 5

5. 頭部は複眼部の幅の2.1倍より長い;
触角第3節は雄で頭部の 0.70-0.74倍、雌で 0.66-0.70倍の長さ;
雄の第6腹節の角状突起は内側に湾曲する;
雄の亜生殖板は細長い。
関東以西の西南日本;台湾;中国に広く分布し、本属中最も普遍的に見られる。
ブナ科やクスノキ科の常緑広葉樹の枯れ葉に生息する。
体長:雌 5.7-7.9mm 雄 5.6-7.7mm … B. brevitubus Takahashi

 - 頭部は複眼部の幅の2.0倍より短い;
触角第3節は雄で頭部の 0.65-0..67倍、雌で 0.61-0.63倍の長さ;
雄の第6腹節の角状突起は外側に湾曲する;
雄の亜生殖板は舌型。
本州・九州に分布し、おそらく日本の温帯地域に広く分布するものと思われている。
クリやクヌギなどブナ科の落葉樹の枯れ葉に生息する。
体長:雌 4.6-6.2mm 雄 4.2-6.2mm … B. quadrituberculatus (Bagnall)

6. 頭部は複眼部の幅のほぼ2倍の長さ; 複眼は頭長の1/3より僅かに短い;
触角第3節の感覚錘はよく発達し、第3節のほぼ半分の長さ;
前胸の後側板副刺毛はやや長く、通常後側板刺毛の1/3よりかなり長い;
雄の第6腹節の角状突起はほぼまっすぐか弱く外側に湾曲する。
関東以西の西南日本に広く分布する。スダジイやアカガシなどブナ科の常緑樹の枯れ葉に生息する。
体長: 雌5.1-7.0mm 雄 4.9-6.9mm … B. honoris (Bagnall)

 - 頭部は複眼部の幅の 1.67-1.88倍の長さ; 複眼は頭長の1/3より僅かに長い;
触角第3節の感覚錘は短く、第3節の1/3より短い;
前胸の後側板副刺毛は通常短く、少なくとも後側板刺毛の1/3より短い;
雄の第6腹節の角状突起は内側に湾曲する。
本州(山梨県・長野県)の山地帯から知られ、ミズナラの枯れ葉から発見される。
体長: 雌 5.4-7.2mm 雄 4.4-6.8mm … B. montanus Haga & Okajima

 1から検索をはじめます。

 1から3へ、そこから4へ進みます。

 前胸後側板の刺毛はよく分かりませんが、近くにアカガシはありませんし、触角から5へ進みます。

 5で困りました。 頭部 (長さ 0.55mm) は複眼部の幅 ( 0.3mm) の 1.8倍、触角第3節 (長さ 0.35mm) は頭部の 0.67倍で、体長は 4.8mmのメスです。 しかし、私の撮った写真からの測定では、0.1mmレベルでは誤差が大きくなってきます。 長いものほど誤差は少ないでしょうから、最も信頼できる値は体長、その次には頭部の長さと幅の比でしょう。 ということで、写真のオオツノアザミウマ属は B. quadrituberculatus ということになりました。

 前回撮ったツノオオアザミウマ属は、体節ごとに赤い色が見られます 。 これもいつか、この検索表で同定しようと思います。

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