2023-03-19

リュウキュウナガハシゴケ

 上の写真は朽木の上に育っているコケ群落ですが、このコケの名前を調べるのには苦労しました。 1種だと思い、今回は胞子体から調べ始めたのですが、葉を顕微鏡で観察する段階で2種の混生だと気づきました。 2種とも似た蒴をつけていますし、1mmほどの葉ですので、光学顕微鏡を使うまでは、実体双眼顕微鏡でも2種であることには気づきませんでした。
 2種だと分かって写真を見直してみると、上の写真でも赤い矢印のコケと青い矢印のコケとは別種のようです。 調べた蒴もどちらの種の蒴だったのか分からず、最初から調べなおしです。
 いろいろ調べた結果は、赤い矢印のコケはリュウキュウナガハシゴケで、青い矢印のコケはシロハイゴケだと思います。

 上は左下がシロハイゴケ、右上がリュウキュウナガハシゴケだと思います。 両者は科も異なるのですが、この倍率では、とても良く似ているようにみえます。

 以下はリュウキュウナガハシゴケ Trichosteleum boschii の観察結果です。

 茎は比較的短く、そこからの枝の多くは立ち上がります。


 上の2枚は茎葉です。 細胞の背面に1個の大きなパピラがあります。 葉縁には細かい歯があり、中肋はありません。 下半部は弱く内曲する傾向があります。


 上の2枚は翼部です。 平凡社の図鑑には「翼細胞は各側に3個あり,大きくて薄壁。」と書かれていますが、3個きれいにそろっているとは限りません。
 なお、枝葉は、ほんの少しですが、茎葉より大きく、翼細胞も少し茎葉よりも大きくなります。

 上は葉身細胞です。

 以下は胞子体の観察です。

 蒴は傾くか垂れ下がり、長い嘴のある蓋を大きな帽が覆っています(上の写真)。 蒴柄の長さは、平凡社では5~8mmとなっていて、上の写真でもその範囲に収まっています。

 蒴歯は内蒴歯と外蒴歯が揃っています(上の写真)。

 外蒴歯と内蒴歯の歯突起はほぼ同じ長さです。

 胞子の径は8~10μmです(上の写真)。

(2023.3.10. 屋久島)

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