上はヒメハナガサゴケ Splachnum melanoeaulon の蒴です。 2023年6月24日に、長野県・麦草峠にある麦草ヒュッテの島立さんに案内していただき、撮影することができました。
本種は岩月らにより2005年に日本新産として報告された稀なコケで(蘚苔類研究9(1))、2001年に出版された平凡社の図鑑にも記載はありません。
蒴柄は暗紫色で、長さ2~3cmです。 蒴のスカート状に広がった部分は、上記撮影日の5日ほど前に島立さんが撮られた写真では白色~淡いピンクですが、時間が経つと上の写真のように濃い色になるようです。
本種はいわゆる「糞ゴケ」で、糞の上に生育します。 そのため、自身も糞に似たにおいを出し、糞を好むハエを呼び寄せ、ハエの体に胞子をつけて新しい糞に胞子を運んでもらいます。
上の写真はクロバネキノコバエ科の1種と思います。 このハエが糞を好むのかどうかは分かりませんが、撮影時には数頭来ていました。
蘚類の胞子は蒴の壺に入っています。 上の写真で、壺は色の濃い円筒形の部分で、それより少し色が薄くなり、次第に広がっているのは頸部です。 ふつう蒴柄と壺の間にある頸部は壺より小さいのですが、本種の場合はこの部分が発達し、スカート状に広がっています。 この部分がにおいを出すなどハエを呼ぶ役割を担っているのでしょう。
上の写真の右側には、蒴柄が3本写っていますが、蒴が何者かにかじり取られています。 少し引いて見ると・・・
かなり多くの蒴がかじり取られています。 上記の5日ほど前の写真を見ると、かじり取られた跡は見えません。 他の蘚類でも蒴がかじられているのはよく見かけますが、このように短期間に蒴がきれいに食べられるのは、あまり見かけません。 犯人は誰なのでしょうね。
上記岩月ら(2005)によると、本種は雌雄異株とされています。 たくさんの胞子体があるので、雄株も近くにあるはずです。 上の写真にも雄株が混生しているのでしょう。
葉は倒卵形で、葉先は先細りに長く伸びています。 胞子体をつけた配偶体は胞子体に栄養を送り続け、かなり弱っています。
0 件のコメント:
コメントを投稿