2023-06-05

ナンヨウトゲハイゴケ


 渓流近くの湿岩上にあったタケノコのようなコケ、かなり大きな群落です。

 基物上を這う一次茎から二次茎が立ち上がっています。 葉は覆瓦状につき、乾いても湿っても茎からあまり離れません。

 葉は深く凹み、中部付近がもっとも幅広く、葉先は急に細くなっています。 中肋は短く2叉し、翼部が発達しています。


 翼細胞は大きく薄壁です(上の2枚の写真)。

 上は葉身細胞で、パピラは見られません。

 さてこのコケですが、以前載せたナンヨウトゲハイゴケ Wijkia hornschuchii (こちら)に似ています。 ところが平凡社でこの種の解説を読むと、中肋は無いと書かれています。
 平凡社のこの属の検索表には、もう1種、フナバトガリゴケ W. concavifolia が載せられています。 野口でこの種を調べると、やはり図には中肋が描かれていませんし、この種の解説にも中肋については触れられていません。
 困ってFacebookに載せると、Wijkiaの属の解説には "costa absent or indistinct."(中肋は無いか不明瞭)と書かれていることを教えていただきました。
 写真のコケの中肋以外の形態は Wijkia にほぼ一致していますし、中肋も不明瞭であってもある場合もあるということですから、写真のコケはナンヨウトゲハイゴケかフナバトガリゴケのどちらかだと思います。 両者の違いは微妙で迷うのですが、とりあえずよく名前の知られている前者としておきたいと思います。

(2023.5.12. 愛知県設楽町 標高800m付近)


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