上は堺自然ふれあいの森の畑で撮ったムシクサです。 この名前を漢字で書くと「虫草」です。 「虫」とは? それは記事の後半で・・・。
ムシクサは、いわゆる雑草として、そんなに珍しくもない植物です。 しかし、上の写真でも花が咲いていますが、目立つ花でもなく、小さな植物で、気のつかない人も多いのではないでしょうか。
しかしこのムシクサ、気付かれないうちに変化が起こっているのかもしれません。 従来、ムシクサは湿地を好む植物でした。 ところが近年は都市部などの乾燥した所に生えるものが現れています。 この乾燥したところのムシクサは、姿はそっくりでも、従来のムシクサとは別系統の外来植物である可能性があります。
上は花の咲いているところを拡大したものです。 花の径は、咲き方にもよりますが、2~3mmです。 葉と紛らわしいガク片が4枚、花冠は深く切れ込んで4裂し、オシベは2本で、中央に太いメシベが1本あります。 この花のつくりから分かるように、ムシクサはオオイヌノフグリなどと同じ属( Veronica )の植物です。
上は果実です。 オオイヌノフグリなどの果実と共通点がありますね。 1枚目の写真のムシクサも、まだ緑色のたくさんの果実をつけています。
上の写真の果実は、もう種子散布間近で、少し裂けかけています。
上は果実を切断して中の種子を見たものです。
上の写真の左側はこれまで見てきた果実ですが、右側のように、大きく膨れた果実のようなものをつけているムシクサもよく見かけます。 これまで見てきたように、左側の果実はちゃんと種子もできていて、これで熟した色ですから、右のものの大きさは異常です。
じつは右のものは虫えい(=虫こぶ)で、ムシクサツボミタマフシという名前が付けられています。 メシベの子房が虫に寄生されて膨れた姿で、名前からするとツボミの段階で寄生される(産卵される)ということでしょうが、いつ産卵されるかは、私は確認できていません。
「ムシクサ」という名前は、このような虫えいがよく見られる草ということでつけられた名前でしょう。
このムシクサツボミタマフシ(上の写真の右中央のもの)を切って中を調べてみました。
上の写真の切断面右上に見えるのが寄生者だと思います。 撮影したのは、2015.5.13.でした。
9日後の2015.5.22.に切ってみると、蛹になっていました(上の写真)。 この蛹は、体を激しく揺すり、虫えいからこぼれて下に落ちてしまい、行方不明になってしまいました。 虫えいに守られているのに体を激しく揺する能力を持っているのは、もしかしたら二次寄生者がいて、それに対抗する手段かもしれませんね。
羽化が近いだろうということで、ムシクサツボミタマフシのついているムシクサを持ち帰り、観察することにしました。
2015.5.29.気がつくと、小さなゾウムシが歩いていました(上の写真)。 虫えいからの脱出が始まったようです。 ゾウムシの体長はどこまでを測ったらいいのかよく分からないのですが、写真のような姿勢で口吻の先までが 2.5mmでした。
上の写真の左下の虫えいに穴が開いていますが、ゾウムシの体の太さよりも小さな穴で、ここから写真のゾウムシが脱出したのではなさそうです。
この穴を覗くと・・・
穴の奥にゾウムシの脚と口吻らしきものが見えます。 脱出のための穴を開けているようです。 脱出の瞬間を撮ることのできるチャンス! とスタンバイして待ち構えていたのですが、その気配を察知されたのか、何の変化も起こらず、根負けしてしまいました。
あきらめて他の虫えいを切ってみると・・・
上2枚は同じ虫えいですが、下は別の虫えいです。 同じ株についていた虫えいで、同じように発生が進んでいたようです。 たぶん同じ個体が産卵した卵から発生したものでしょう。
このゾウムシはムシクサコバンゾウムシだろうと思います。