赤茶けた岩に鮮やかな濃い緑色をしたコケ、イワマセンボンゴケ(
Scopelophilla ligulata )です。 「イワマ」は「岩の間」の意味のようです。
岩肌の赤茶けた色は鉄分が多いからでしょう。 鉄はもちろん植物にも必要ですが、土壌中の多すぎる鉄分は植物の生長を阻害するようで、特にリン酸の固定力を高めることで植物がリン酸を吸収しにくくしたり、拮抗作用によってカリウムイオンの吸収を阻害するようです。
コケの仮根は体を固定させるためのもので、吸収は植物体全体で行うのですが、多量の鉄イオンの有害性は維管束植物の根からの吸収の場合と同様でしょう。 ただ、イワマセンボンゴケは他のコケなどに比較して鉄イオンに対する耐性があるために、他のコケが育たない環境を“独り占め”できるのでしょう。
育っていた所では上の写真のように葉が開いていますが、乾くとすぐに2つ折りになって縮れます。 下の写真の葉は水に漬けて広がっていた状態から取り出し、ティッシュで水分を吸い取って数十秒後です。
そして縮れた葉を水に漬けても、なかなか広がりません。 このような吸収能力の低さが上記の耐性に関係しているのでしょうか。
葉縁に舷は見られませんでした。 葉身細胞は六角形~矩形です。
(2015.10.14. 高槻市 川久保渓谷)
◎
こちらでは銅イオンに耐性のある同属のホンモンジゴケと葉の比較をしています。