2017-04-10

キダチヒラゴケ


 上の写真の中央から左右に広がっているのがキダチヒラゴケ Homaliodendron flabellatum です。 大きなコケで、右上のスギの枯葉と比較しても、その大きさがわかるでしょう。
 渓谷の岩上に生えていましたが、濡れているのは雨のためです。


 這う一次茎(上の写真の左下)から立ち上がった二次茎は平らに羽状に分枝しています。 1枚目の写真も二次茎しか写っていませんが、一次茎からたくさんの大きな二次茎が出ているのですから、とても大きなコケですね(こちら)。 こちらでは一次茎から二次茎が分枝する様子などを観察しています。


 二次茎や枝につく葉は光沢があり、扁平についています。


 葉は非相称で葉先の縁には大きな歯牙があります。基部の縁は片側だけが内曲していて、上の写真でも折れ曲がっています。 中肋は葉の中部に達しています。



 上の2枚は同じ葉の葉身細胞で、歯牙に近い所と中肋に近い所とを載せました。 場所によって細胞の形や長さが異なっていますが、平凡社の図鑑に記載されている葉身細胞の形や長さは前者についてのみのようです。

 ところで、下の写真で、赤い丸で囲ったものはゴミ(小石?)ですが、これと似た大きさのものが茎に接してたくさんあります。 少しボケて見えるのは、これが葉と葉の間にあるからで、葉をとおして見ているからです。


 下の写真は、このうちの2つについて、上にある葉を取り除き、深度合成したものです。 写真の右上にはもう一つ、葉に隠されているものが存在します。


 葉よりも細く小さい褐色や緑色の苞葉に守られて何かがあるようですので、この部分を取り出し、光がとおるように半分に切って薄くして顕微鏡で撮影したのが下です。


 細胞が一列につながった糸状の側糸らしいものが見えることから、色の濃い部分は精子を出し終えた造精器ではないかと思います。

(2017.3.26. 徳島県海陽町 轟九十九滝)

こちらではキダチヒラゴケについて、胞子体を中心に観察しています。


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