2019-07-27

ナメリチョウチンゴケいろいろ


 上はナメリチョウチンゴケ Mnium lycopodioides ですが、今回は上の写真から、ナメリチョウチンゴケの
  (1) 古いコケと新しいコケの変水性の違い
  (2) 古くなった葉の色の変化
  (3) さまざまな葉形
 について、気づいたことや思ったことを書いてみたいと思います。

(1) 古いコケと新しいコケの変水性の違い
 多くのコケは乾くと休眠状態に入り、水を得ると素早く回復する性質を持っています。 水の有無により生命活動の状態を変化させるこの性質を変水性と呼んでいますが、休眠時に葉が縮れたり巻いたりする種類も多くあり、ナメリチョウチンゴケもそのうちの一種です。
 上は、よく乾いて葉の巻いた状態の①と②に同時に水を与えて2~3分後に撮った写真です。 葉の色から分かるように、①の方が若いのですが、回復が遅れています。 同様のことは、ほかのコケでも度々経験しています。
 なぜこのようなことが起こるのでしょうか。 若い葉では細胞壁がまだ軟らかく、復元力が弱いのでしょうか。 若い葉の細胞の方が吸水力が弱いのでしょうか。 それとも・・・

(2) 古くなった葉の色の変化
 1枚目の写真で、①より②の葉が、また②でも上より下の葉が赤くなっています。 つまり古い葉ほど赤くなっています。 下は1枚目の写真のa付近の葉です。


 上の写真を見ると、細胞壁を中心に赤くなっています。 種子植物の紅葉は細胞質内の液胞にアントシアンが蓄積されることによりますから、これとは別のしくみが働いているのでしょう。
 コケ植物の細胞壁は全透性ですから、水溶性の色素が入り込むことは不思議ではないのですが、赤く染めている色素は何なのか、生態的にはどのような意味を持つのか、ネットで調べたのですが、答は見つけられませんでした。

(3) さまざまな葉形

 上の写真のaにある葉とbにある葉では、葉形はずいぶん違います。 bのところの葉も顕微鏡で拡大して比較してみました。


 上は2枚目の写真とほぼ同じ倍率で撮影していますが、葉の幅は狭く、長さは長くなって1枚の写真に入りきりません。 葉身細胞の大きさも違うようですし、aの葉には歯が見られませんが、bの葉にはたくさんの歯が並んでいます。 同じ茎についている葉でも、このように異なります。


 上はb付近の葉の歯を拡大した写真で、歯は双歯です。

(観察したコケは、2019.6.12.に神戸市北区の道場で採集したものです。)

◎ ナメリチョウチンゴケはこちらに載せています。

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