2019-10-19

イバラゴケ


 上はイバラゴケ Calyptrochaeta japonica でしょう。 和名の由来は蒴柄に単細胞の透明な刺がいちめんにあり、それを茨に見立てたものですが、蒴はつけていませんでした。
 上の写真を撮っていて気づいたのですが、上部に仮根のようなものが見られる茎でも、茎の中ほどには仮根は見られません。 上の写真には写っていませんが、茎の下部にも、多くの蘚類同様、仮根が見られます。


 茎の上部に見られる仮根のようなものを顕微鏡で観察すると(上の写真)、どの細胞も幅はほぼ同じで、葉緑体が見られました。 しかし形態的には無性芽とは言えないでしょう。 下は上の一部の拡大です。


 ケチョウチンゴケのように、仮根から無性芽が作られるのでしょうか。


 比較のため、上は茎の下部にある仮根で、土が混じっています。 仮根を構成している細胞の幅は一定していませんし、もちろん葉緑体は見られません。


 葉の長さにはかなりの差があります。 上の写真は茎の上部を撮っていますので、葉は総じて小さく、写真の左の葉でも2mmを少し超えているだけです。 平凡社の図鑑では、葉の長さは2~3.5mmとなっています。



 葉は茎にやや扁平についていて、茎の左右に広がる葉は非相称がきつくなります(こちら)。 上の2枚の写真は、どちらも茎の上下方向についている葉ですので、あまり非相称にはなっていません。
 多くの葉は、上の2枚の写真の1枚目のように、倒卵形です。 葉縁には弱い舷があり、上部の葉縁には小さい歯が見られます。 下は上の2枚の写真の2枚目の葉の基部を拡大したものです。


 平凡社の図鑑には、「中肋は非常に短くて2叉する。」と記載されています。 上の写真で中肋が分かるでしょうか。
 下は上と同じ写真に、中肋と思われる所に赤い線を入れてみたものです。


(2019.10.9. 奈良県宇陀市)

◎ イバラゴケはこちらにも載せています。


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