2020-03-19

ヤクシマミズゴケモドキ


 写真はヤクシマミズゴケモドキ Pleurozia subinflata です。 太い木の枝に着生していました。 東アジア~東南アジアやハワイに分布しているようですが、日本での分布は屋久島のみのようです。


 蒴がついているあたりを拡大してみました(上の写真)。 造卵器は側枝の頂にできるのですが、この造卵器を保護する役割を持つ花被に2つの型が見られます。 造卵器の中の卵細胞が受精すると、稜が多い長紡錘形の花被が作られ、花被の先端には長毛が見られます(上の写真では白っぽく写っています)。 受精しなかった場合も花被が発達するのですが、その場合は稜は無く、全縁の口がぽっかり開いた花被になります。


 葉も複雑です。 上は花被をつけていない枝先ですが、①は全縁で鈍頭の葉先のように見えますし、②は2歯がある鋭頭の葉先のように見えますし、③は2裂している葉のように見えます。 じつは・・・


 葉は重なりあっていて、一枚の葉を取り外すのはなかなか難しかったのですが、上が1枚の葉です。 葉はついている位置などによって形も大きさも少しずつ変化しますが、標準的な葉を選んで載せています。
 葉は2裂し、背片(上の写真の左)と腹片(上の写真の右)になります。 背片は腹片より少し小さく、腹片との境から伸び出した部分と基部の葉縁が内曲し、基部で両者が合着しています。 この背片は仏炎苞状背片と呼ばれていて、本種の場合はほとんどこのような背片ですが、なかには袋状になって開口部が先端にある背片となることもあるようです。(私が初めてミズゴケモドキの仲間を見てその解説を読んだとき、この袋状背片と上記の受精しなかった場合の花被とを混同し、わけが分からなくなってしまいました。) また腹片は鋭頭で、多くの場合2歯があります。 なお、ミズゴケモドキ科に腹葉はありません。


 上は葉身細胞です。 トリゴンは巨大で、油体は球形で微粒からなっています。

(2020.3.3. 屋久島)

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