上のコケの最初の印象は「大きくごわごわしたコケ」でした。 樹状に枝分かれしながら、基物上を這った状態から枝先が巻き上がっています。 葉は枝の周囲に丸く密につき、乾いた状態で枝にくっついていて縮れる様子はありません。
育っていたのは燈籠の上です(上の写真:いろんなコケが混ざっています)。
葉面は凹んで縦じわがあり、全縁で、葉先は急に細くなって尖り、中肋は葉の中ほどで終わっています。 葉身細胞は細長いのですが、翼部の細胞は丸みを帯びた方形です。
これらの特徴は
スズゴケに似ています。 そこでスズゴケの標本と比較してみました。
左がスズゴケ、右が今回のコケです。 スズゴケの標本が2年前の標本で緑色が薄れていますし、生育状況で大きさも変わるでしょうが、上の写真を見るかぎりでは、今回のコケの方が葉を含めた枝の幅は太く、枝は比較的少数のようです。 また、最初に書いたように、第一印象もスズゴケより大形で硬いものでしたので、
フトスズゴケ Forsstroemia neckeroides ではないかと思います。
両者の明確な違いは蒴柄の長さで、フトスズゴケの蒴柄は短く、蒴は苞葉の間に隠れるようですが、蒴はつけていませんでした。
以下、各部をもう少し数値化して見ておきます。
上の2枚は同じ枝で、上が乾いた状態、下が湿った状態です。 湿ると葉も枝の角度も少し開きます。 葉の長さは 1.5~3mmです。
上は葉のほぼ中央の葉身細胞で、長さは 30~45μm、長楕円形で厚壁です。
(2020.8.4. 兵庫県佐用町)