2020-10-20

マルフサゴケ

 

 朽木に育っていた写真のコケ、マルフサゴケ Plagiothecium cavifolium のようです。


 葉は丸くつき、長さは2mmほどです。 上は乾いた状態ですが、葉はほとんど縮れていません。 葉先が反り返っている葉があちこちに見られます。
 蒴柄の長さは25mmほどあります。 平凡社の図鑑では 10~15mmとなっているのですが、前に別の場所で見たものも 30mmほどありますし(こちら)、「こけ雑記」さんのところにも蒴柄の長さが2.5~3.5cmの本種が載せられています(こちら:西宮市のSさんから情報をいただきました)。


 葉は深く凹んでいますので、葉縁から中央部まで全体にピントを合わせることはできません。 ちなみに、学名の種小名は「凹んだ葉」という意味です。
 葉先は、上や下の写真のように、多くの葉で急に尖っています。 中肋は上のようにはっきり2叉しているものもありますが・・・

 上のように一見1本の中肋のように見える葉も、かなりの割合で混じっていました。 これについても上記Sさんの意見をうかがったところ、下の方で分岐が見られるので、二叉していると見ていいのではないかということでした。 Noguchi(1994)を見ても、二叉しているが長短の差が大きく、基部がくっついている中肋の図が載せられています。

 上は葉身細胞です。 Plagiothecium(サナダゴケ属)では葉身細胞の幅は重要な分類形質で、平凡社の図鑑では本種の葉身細胞の幅は8-12(-15)μmとなっています。 上の写真では、ほとんどの細胞の幅は 10~12μmで、よく一致しています。

 上は茎の横断面です。 平凡社の図鑑では、「(サナダゴケ科では)茎の横断面で表皮細胞はふつう大きくて透明」となっています。 上の写真を見ると、表皮細胞は中央部の細胞より小さいのですが、たしかに表皮のすぐ内側の細胞と比較すると大きな細胞です。

 上は蒴で、蒴歯は2列で完全です。 この蒴歯を顕微鏡で観察すると・・・

 2列で完全な蒴歯を持っている蒴では、薄い内蒴歯は丈夫な外蒴歯に邪魔され、よく観察できない場合が多いのですが、上の写真ではたまたま外蒴歯の一本が基部近くから折れて無くなっていて、内蒴歯の様子が分かり易くなっていたので、名称をつけておきました。

(2020.8.31. 北海道 苫小牧市)


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