2020-12-23

タカネカモジゴケ

 

 樹幹についていた写真のコケ、2枚目の拡大した写真では、下部のほとんどの葉が途中で折れています。 以下の観察結果を併せると、タカネカモジゴケ Dicranum viride var. hakkodense でしょう。 なお、上の写真のあちこちに写っている苔類はケシゲリゴケでした。

 上は乾いた状態ですが、葉はかたく、縮れていません。 上部の折れていない葉の長さは、平凡社では3~4mmとなっていますが、上の写真では5~6mmあります。

 顕微鏡観察しようと葉を1枚茎からはずしたところ、ちょうど折れてくれました。 基部近くが折れ畳まれてしまいましたが、全体の様子はよく分かります。 葉は鞘部から線状披針形に漸尖し、翼部は明瞭で、大きな細胞からなっています。 葉の基部で中肋の幅は葉の幅の1/3以下です。

 上は葉先近くです。 葉先を除いて歯はありません。 ほとんど中肋で占められているようですが、そのことは下の葉の断面の組織の様子から見る方が明白なようです。

 上は葉の基部近くの横断面です。 中肋のステライドは明瞭です。 葉は1層の細胞からなり、中肋とは明瞭に区別できます。
 下は上と同倍率の葉の上部の横断面です。

 葉の上部では溝状の凹みが深くなり、ほとんどが中肋の組織になっています。 平凡社の図鑑では、葉の上部では葉身は2細胞の厚さがあると書かれています。 上の写真でどこまでが中肋なのか、連続していて分かりにくいのですが、中肋にはガイドセルやステライドがありますから、それらに注目すると、たしかに中肋以外の部分では2細胞層になっています。

(2020.11.26. 奈良県 上北山村)

◎ タカネカモジゴケはこちらにも載せています。 また、こちらにはタカネカモジゴケの蒴などを載せています。


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