2021-08-01

コセイタカスギゴケの葉の観察

 

 山道の脇で、道に横たわるようなコケがありました(上の写真)。 ルーペで観察してスギゴケ科のコケだと分かりましたが、普段見慣れているこの大きさのコケは直立している場合がほとんどで、少し持ち帰って調べてみました。

 葉の長さは葉鞘部を除いて4~7mm、土に埋もれた部分は仮根が発達し、横にもつながっているようです。

 葉は乾くと上の写真のように縮れます。 この縮れ方を見ると、Polytrichumt(スギゴケ属)ではなく、Pogonatum(ニワスギゴケ属)でしょう。

 上は葉の上部です。 葉縁には鋸歯があり、葉身部には薄板(ラメラ)が何列も走っています。

 上は葉の下部で、葉緑体が少なく白っぽい所は葉鞘で、茎に接している部分です。 注目すべきはこの葉鞘部にも鋸歯があることで、2枚目の写真のようなサイズで葉鞘部に鋸歯があることから、コセイタカスギゴケ Pogonatum contortum だろうと見当がつきます。 特にホウライスギゴケはコセイタカスギゴケととてもよく似ていて、下に書く薄板の様子もよく似ているので、葉鞘部の鋸歯の有無は両者を見分ける良いポイントになります。

 スギゴケ科の同定では薄板のつくりもとても重要なポイントになるので、調べてみました。

 上が葉の横断面です。 薄板の高さは葉の中央部で3(~4)細胞、周辺部では2細胞です。
 下は上の中央部の拡大です。

 端細胞(薄板のいちばん上にある細胞)は球形に近く、上面はパピラなどなく平滑です。 また、端細胞の細胞壁の厚さは、上面と側面でほぼ同じです。

 上は葉の腹面側から撮った写真です。 薄板と薄板との間には少し隙間があり、端細胞は縦に密に1列にくっつきあっています。 上から見た端細胞は少し縦長のものも少し横長のものもあり、全体的には縦と横の長さは同じと言って良いでしょう。

 上は葉の横断面の葉縁付近です。 平凡社のニワスギゴケ属の検索表で本種を確認すると、葉縁の鋸歯の有無 → 薄板の端細胞のパピラの有無 と進み、次に「葉縁の2~3細胞列は横断面で2細胞層の厚さ」か「葉縁は1細胞層」の分岐になります。 さて、本種はどちらでしょうか?
 上の横断面は、ちょうど鋸歯の所で切断されています。 鋸歯の先端の細胞は褐色で、それに連なる数細胞は葉緑体を持たず葉身細胞とは異質で1層です。 これを葉縁の細胞と見てしまうと、平凡社の検索表ではコセイタカスギゴケにたどり着けなくなってしまいます。

(2021.7.8. 秋田県 乳頭温泉郷 標高 800m)

こちらには蒴のあるコセイタカスギゴケを載せています。

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