この記事はこれまでイボタチヒダゴケ Orthotrichum iwatsukii としていましたが、タチヒダゴケ属を研究されているK氏から連絡いただき、検討の結果、タチバヒダゴケ O. sordidum に訂正します。
これまでは平凡社の検索表に従ってイボタチヒダゴケだろうとしていたのですが、検索表の内容はパピラが高い/低い、蒴柄が長い/短いなど相対的なものですし、イボタチヒダゴケについての記載は検索表のみです。
K氏によれば、外蒴歯の上部がラティス構造(格子のような構造)になっているが、この構造はタチバヒダゴケやその近縁種に見られ、イボタチヒダゴケ はこのようにはならないとのことです。 また、この群のパピラは多型で、決め手にはなりにくいようです。 なお、イボタチヒダゴケはとても珍しいコケとのことです。
上の2枚は樹幹に生育していた状況です。 地衣類があちこちについていて、かなり乾燥した状態でした。
葉は披針形で、中央付近で軽く反っているため、プレパラートにすると上のような姿になってしまいます。 葉の中央部の葉縁は強く反曲しています。 葉の基部の細胞は矩形で透明です。
葉先は徐々に細くなっています。 中肋は葉先に達していません。
上は葉身細胞です。 各細胞にはふつう2個のパピラがあります。
上は細胞を斜め上から見ていて、パピラの様子がよく分かります。
タチヒダゴケ属の同定は、蒴が無いとかなり困難になりますが、この属の胞子体の観察に適した時期は春の終わりから夏の初めです。 採集してきた標本を見ても、殆どが古い蒴でしたが、1つだけまだ胞子を持った蒴がみつかりました。 奥には毛のついた帽も見えます。
下はこの胞子体の手前の葉を取り除いて撮った写真です。
下はこの蒴を縦断したうちの片方です。
上は、蒴柄はついていませんが、蒴歯から頸部まで写っています。 本属の外蒴歯は16本ですが、そのうちの対になった6本が右上に写っています。 あちこちに胞子が散らばっています。
下は赤い四角で囲った部分の拡大で、赤い円で囲った所に気孔があります。 本属の蒴の気孔には沈生のもの(例えばこちら)と表生のものがあり、本種の場合は明らかに表生です。 また、気孔は頸部にあるのではなく、蒴の中部から下部にかけてあちこちに見られます。
(2021.10.6. 長野県 蓼科)










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