上はウスバハタケゴケ Riccia glauca だと思います。 富永・古木(2014)の記載とはサイズ的には少しずれるのですが、形態的な特徴はほぼ一致しています。 光が当たるとキラキラ光っていました(2024.4.20. 京都府立植物園にて撮影)。
葉状体背面の先端近くには、幅が狭く、浅く、短い溝があります。 胞子体は成熟しても背面側に盛り上がってこないようで、表面からは胞子体がうっすらと黒く見えるだけで、ほとんど目立ちません。
植物体は上のようにロゼットをつくったり・・・
上のような入り組んだマット状になったりしていました。
ハタケゴケの仲間としては比較的幅広く上の写真では 2.5mmほどあります。
横断面を観察してみました(上の写真)。 たくさん気泡が入ってしまいましたが、葉状体は比較的薄く(これが和名の由来)、上の写真では、幅は高さの3.5倍ほどあります(富永・古木では4~5.5倍)。 背面の側部は畝のようにはなっていません。
上の写真の中央左寄りに胞子体があります(これを狙って切片を作成しました)。 この部分を拡大したのが下です。
造卵器の頸部もきれいに残っていますが、胞子は熟しているようです(上の写真)。
上が胞子です。 径は45~50μm(富永・古木では55~75μm)、遠心面でも求心面でも畝が網目を形成し、畝の交差部は突起になっています。 網目は上の写真では直径上に5個、他の写真でも7個まで(富永・古木では7~10個)でした。 翼は薄く明瞭です。
上は葉状体の縦断面の背面側です。 背面側の表面は葉緑体の無い透明な細胞からなっています。 最初の所でキラキラしていると書きましたが、この透明な細胞が光を反射しているのでしょう。
【参考文献】
富永孝昭・古木達郎(2014). 日本産ウキゴケ属Riccia節の分類学的研究. 蘚苔類研究11(3).