※ 記事は2022.3.20.に一部書き換えています。
「ジャゴケ」の和名は葉状体の背面に蛇の鱗に似た模様がある所からでしょう。 この“鱗”の真ん中には気室孔があります。
従来ジャゴケは1種と思われていて、Conocephalum conicum という学名が与えられていました。 しかし、アロザイム多型や葉緑体遺伝子の解析から、世界的には7種(または6種)が存在し、日本のジャゴケについても4種であることが分かり、オオジャゴケ、ウラベニジャゴケ、タカオジャゴケ、マツタケジャゴケという名前がつけられています。 なお、最初に載せた学名はヨーロッパ大陸にのみ分布するタイプにつけられた学名で、日本のものには該当しません。
日本の4種は以下のような生育地や特徴の異なる傾向があるようですが、生育環境や時期的な違いによる個体差もあり、見分けるのがなかなか難しい場合もあるようです。
● オオジャゴケ Conocephalum orientalis
日本全国に分布して最も普通に見られます。 湿った場所を好む傾向があるようです。
● ウラベニジャゴケ C. purpureorubrum
関東北部以南の、沢から離れた場所に見られます。 関東地方で見られる黒みを帯びた東日本型と、静岡~沖縄で見られる黄色味を帯びた西日本型があります。 気室孔とその周辺の組織は小さく、気室の幅の1/3程度です。 気室間の溝が深くはっきりしています。 しばしば葉状体の中央に黒い帯が入ります。
● タカオジャゴケ C. salebrosum
葉状体は薄く、ツヤがありません。 北半球の冷温帯に広く分布するコケです。 気室孔とその周辺の組織は小さく、気室の幅の1/3以下です。 気室間の溝が浅く、あまり目立ちません。
● マツタケジャゴケ C. toyotae
乾燥に弱いようで、冬季に雪で覆われる所に分布します。 強いマツタケの香りがします。 種小名は最初に発見された豊田博士の名にちなんでいます。
以下は大阪府下で普通に見られるオオジャゴケについてです。
上は2016.6.15.に大阪府北部にある豊能町の初谷で、道脇の斜面に育っていたものです。 葉状体の先近くが少し膨れているようです。
上は葉状体を腹面から見たもので、膨らみは背面から見るよりも明らかです。 この膨らみの断面を作ってみると・・・
上は葉状体の断面で、写真の上側が背面、下側が腹面です。 膨らみの中には、もう小さなキノコのような雌器托ができています。 既に受精しているのか受精しなくてもこの段階までは進むのかは不勉強で分かりませんが、受精しているとすれば、これから10ヶ月ほどかけてじっくり胞子体が形成されていくのでしょう。 その10ヶ月後の姿を、時計の針を逆に回すと・・・
上は 2016.3.29.に河内長野市の岩湧寺近くで撮ったもので、葉状体の背面を突き破って雌器托が伸びはじめています。 この雌器托の柄の断面の様子はこちらに載せています。
胞子が成熟すると、雌器托は急激に長く伸びます。 伸びて胞子を出している状態の雌器托はこちらに載せています。
◎ ジャゴケは雌雄異株で、上に載せたのは雌株です。 雄器床をつけた雄株の様子はこちらに載せています。