2016-01-31

1月のコゴメゴケ


 上(深度合成しています)はコゴメゴケ Fabronia matsumurae でしょう。 白っぽい三角形に見えているのは帽です。 育っていた状態は・・・



 上の写真の中央付近で、褐色の粒々のように見えているのがコゴメゴケの蒴です。


 湿ると上のようになります(深度合成しています)。

(2016.1.24. 堺市中区深井清水町)

◎ コゴメゴケの葉の顕微鏡写真などはこちらを、12月に撮ったみずみずしい緑の胞子体の様子はこちらをご覧ください。

2016-01-30

クロバネキノコバエ科の一種



 コケを育てているテラリウムにクロバネキノコバエ科の一種の成虫が3頭いるのをみつけました。 体長は3mmほどです。 上の1枚目は頭部にピントを合わせたもので、2枚目は翅脈が分かるように撮ったものです。



 上でテラリウムと書きましたが、そんな立派なものではなく、食品が入っていたプラスチックケースです(下の写真)。 下の写真は撮影のために蓋を開けていますが、普段は密閉状態ですから(詳しくはこちら)、コケを採取した時に卵(または幼虫)が紛れ込んでいたのでしょう。


 クロバネキノコバエ科のハエは、植物の死骸や朽木、菌類などを餌として利用するとされています。 今回見つけたクロバネキノコバエも、土についていた菌類もしくはデトリタス(コケの枯れたものを含む)を食べて羽化したのでしょう。

※ クロバネキノコバエ科のハエはこちらにも載せています。


2016-01-29

ヤノネゴケ


 写真はヤノネゴケ Bryhnia noesica です。 下のような環境に生えていました。


 上の写真の赤い矢印の所がヤノネゴケです。


 上は枝分かれの様子を見るためにほぐしたもので、茎は不規則に分枝しています。


 上は茎葉です。 卵形で先端は細くなり鋭頭、弱い縦じわがあり、全周に細かい歯があります。 中肋は葉長の4/5ほどで、翼細胞は明瞭な区画を作っています。

(2016.1.26. 堺自然ふれあいの森)

◎ ヤノネゴケの蒴や枝葉の様子などはこちらに載せています。



2016-01-28

ハイゴケ



 上は木の根元にあったハイゴケ Calohypnum plumaeforme です。 ハイゴケはいろんな所で見かけます。



 上は樹幹の低い所にあったハイゴケです。 ハイゴケの葉は鎌状に曲がっています。


 強く鎌状に曲がっている葉を真っ直ぐにして撮ることはできません。 中肋は2叉しています。 葉の先に近い半分ほどの縁にはちいさな歯があります。

(2016.1.22. 堺自然ふれあいの森)


2016-01-27

雪中のコケ

エゾスナゴケ

 暖冬の辻褄を合わせるように24~25日は一気に冷え込みました。 今日もまだ寒く、堺市南部では昼でも昨夜の雪が残っていました。 しかしコケたちは寒さに縮こまるどころか、雪の水分を得て元気に葉を広げていました。

ススキゴケ

(2016.1.26. 堺自然ふれあいの森)

2016-01-26

ケギボウシゴケ


 上は昨日のチヂレゴケと同じ石垣です。 濃い緑に赤っぽい蒴が点々と見えるケギボウシゴケと、浅い緑色のヒジキゴケが接して育っていました。


 ケギボウシゴケ Grimmia pilifera は岩上に小さな群落を作ると言われています。 蒴の赤い帽が美しいのですが、蒴柄は短く、蒴は雌苞葉に沈生しています。


 乾燥した状態のまま、深度合成してみました。 葉の先は透明尖となっています。


 湿らせると、茎に圧着していた葉が広がり、上のようになります。 葉の先の透明尖は白い背地にしたためにほとんど見えなくなってしまいました (-_-;


 葉は卵状披針形です。


 上は葉先の透明尖の部分を拡大したものです。


 上は葉の基部近くの葉身細胞です。 長く伸びた矩形をしていて、縦壁が節状に肥厚しています。

(2016.1.23. 堺市南区槇塚台)

こちらではケギボウシゴケの葉を詳しく見ています。


2016-01-25

チヂレゴケ


 写真はチヂレゴケ Ptychomitrium sinense でしょう。 近くの民家の石垣にくっついていました。 チヂレゴケはコンクリートや岩組に塊を作ると言われています。 写真の塊はチヂレゴケとしてはかなり大きなものでしょう。


 乾いた状態では葉は上の写真のように巻縮しています。 これが和名の由来でしょう。


 胞子体は頂生しています。 茎は直立し、少し枝分かれしています。


 湿ると上の写真のようになります。


 帽は蒴全体を覆います。 左は蒴全体が帽で覆われている状態です。 中央は帽を取った蒴で、蓋には長い嘴がついています。 右は中央の蒴を覆っていた帽です。


 葉は披針形で先は尖っています。 縁は全縁で、中肋は葉先のすぐ近くにまで達しています。

(2016.1.23. 堺市南区槇塚台)

◎ チヂレゴケの葉身細胞や、蒴歯、胞子の顕微鏡写真などはこちらこちらにも載せています。

2016-01-24

サムライコマユバチの一種の寄主操作

 今回は私が野外で見つけたものの記事ではありません。 説明されているのを横から“取材”させてもらい、写真を撮らせてもらったものです。


 草に絡んだ小さな糸くずの塊のようなもの、私も何度か見たような記憶があります。 大きさが分かるように10円硬貨の上に載せて撮りました(上の写真)。 よく見ると、小さな孔があちこち開いています。(写真はクリックで拡大できます。)


 上はきれいに開いて奥まで見える孔を拡大したものですが、その周囲にも、糸で隠されたようなたくさんの孔が見えます。


 上の写真は1枚目の写真の裏側の一部を拡大したものですが、左下に小さな繭のようなものが見えます。 これを糸くずの塊から分離し、その中にいたものを取り出すと・・・


 小さな繭の中からは、うまく脱出できなかったのか既に死んでいましたが、小さなハチが出てきました。 上の写真の左上はこのハチが入っていた繭です。


 ハチをもう少し拡大しました。 体長は2.3mmです。 このハチはチョウ目の幼虫に寄生するコマユバチ科サムライコマユバチ亜科の一種だろうということです。

 1枚目の写真の長さ1.5cmほどの「糸くずの塊」と、4枚目の写真の小さな繭の関係については、以下のように考えられます。
 このハチの幼虫は集団でチョウ目の幼虫の体内に寄生し、十分生長するとチョウ目の幼虫から出て繭を作りますが、寄主のチョウ目の幼虫は糸を吐いて繭の集団を包み(「糸くずの塊」)、ハチの繭を保護した後に命が尽きるようです。 つまりハチの働きかけにより、チョウ目の幼虫の行動がハチの幼虫に都合が良いように変化したことになります。 このような現象は寄主操作と呼ばれています。
 こちらのYouTubeには、アオムシコマユバチに寄生されたモンシロチョウの幼虫がハチの繭の集団に糸をかける様子が紹介されています。 この場合は「糸くずの塊」と言えるほどのたくさんの糸はかけられてはいないようですが・・・。

2016-01-23

トサカホウオウゴケ


 トサカホウオウゴケは京都コケ展で展示されていたものを前に載せました(こちら)。 今回、自生地を近くに見つけましたので(上の写真)、蒴は見られなかったのですが、葉の様子などを調べてみました。


 平凡社の図鑑には、トサカホウオウゴケの「茎は葉を含め長さ1-3.5cm」とあります。 上の写真のトサカホウオウゴケは、なくなってしまうはずの一昨年度と昨年度の茎と葉が残っていたようです。


 葉も平凡社の図鑑では「中~上部の葉は披針形で、長さ 2.5-4.0mm」とあるのですが、上の写真のように葉の長さは6mmほどあります。 よく育つ環境なのでしょうか。


 上は葉の先で、重鋸歯があります。 葉の縁は厚壁て平滑な細胞が3~4列並んでいて、明るく見えます。 この明るい帯は葉の全周に見られます。

(2016.1.12. 堺自然ふれあいの森)

こちらではトサカホウオウゴケの葉の縁の明るく見える所の細胞と色濃く見える所の細胞とを、もう少し詳しく比較しています。


2016-01-22

冬眠中のニホントカゲ


 写真は冬眠中のニホントカゲ Plestiodon japonicus です。 雨のかかりにくい所で、上を覆っていたものをそっと持ち上げるといました。 ニホントカゲの周囲は円く凹んでいます。 冬眠に入る前にくるくる回って整地したのでしょうか。


 閉じている瞼は半透明で、上下の瞼が中央でくっついているようです。

(2016.1.16. 堺自然ふれあいの森)

2016-01-21

クシノハゴケ


 枯れたジャゴケを覆うように、クシノハゴケ Ctenidium capillifolium が育っていました。 ジャゴケの背面の模様が良いものさし代わりになっています。


 葉は密につき、斜めに開出しています。


 帽には長毛がつきますが・・・


 上の写真のように長毛が目立たない帽もたくさん混じっています。


 蓋には短い嘴があります。


 葉は三角形で非相称、先は次第に細くなり、尖ります。 縁は全周に細かい歯があり、中肋は短い2本からなります。


 葉身細胞は線形です。

(2015.12.27. 堺自然ふれあいの森)

◎ クシノハゴケはこちらにも載せています。 また、こちらにはよく似たコクシノハゴケとの違いを載せています。