2016-10-31

ジャゴケの気室孔



従来ジャゴケとされていたものが3種に分けられることはこちらに書きました。 上の写真はオオジャゴケかと思いますが、よく分かりません。
 そのことはさておき・・・


 ジャゴケの葉状体の表面には、中央に小さな孔の開いた白っぽい突起がたくさん並んでいます。 この孔は「気室孔」、白っぽい突起の内側は「気室」と呼ばれていますが、今回はこの断面を見てみました。


 上がその断面です。 1層の細胞からなるアーチ形の壁が気室を形成しています。 黒っぽく見えている所は葉緑体がぎっしり詰まっているところです。 気室の底面からはたくさんの細長い突起が伸び出しています。 この糸は「同化糸」と呼ばれています。 下はこの同化糸が比較的明瞭に写っている赤い四角の部分を拡大したものです。 なお、赤い四角の左横にあるものはゴミでしょう。


(2016.10.25. 堺自然ふれあいの森)

 以下は寝言です。 気室孔という言葉は、気孔に似ているところからの名称でしょう。 周知のとおり気孔から取り込まれた空気中の二酸化炭素は光合成(=炭酸同化)に使われます。 コケの気室孔も二酸化炭素を取り込むためにあるのでしょうか? 同化糸は表面積を大きくしていますが、この中には葉緑体は見当たりません。
 私はもしかしたらこの気室は空気のための室ではなく、水を貯めておく室ではないかと思います。 もう一度言いますが、こう考えた根拠は何もありません。 単なる空想、寝言です。

2016-10-30

ツガゴケの帽


 帽のある蒴が並んだツガゴケ Distichophyllum maibarae です。


 ツガゴケ属の帽の下端は房状に細裂しています。 また、ツガゴケの帽の上部には数本の長毛があります。

(2016.10.25. 堺自然ふれあいの森)

◎ 蓋の取れた蒴を持つツガゴケはこちらに載せています。 またこちらにはツガゴケの1枚の葉や葉身細胞の顕微鏡写真を載せています。


2016-10-29

フトボメリケンカルカヤ


 上はフトボメリケンカルカヤ Andropogon glomeratus です。 写真の左端に6~7本写っているメリケンカルカヤと比較すると、たしかに「太穂」という名前も納得できます。
 フトボメリケンカルカヤは1977年に神戸ではじめて確認された北アメリカ原産の外来植物です。


 上は左がメリケンカルカヤ、右がフトボメリケンカルカヤです。


 上はフトボメリケンカルカヤの熟した穂の一部です。 両性小穂と無性小穂のセットが縦に一列につながるつくりはメリケンカルカヤと同様のようです。

(2016.10.23.大阪市 舞洲)

2016-10-27

アレチムラサキ


 10月23日に大阪市の舞洲で行われた大阪市立自然史博物館の観察会「埋立地の外来生物 秋編」で見たアレチムラサキ Heliotropium curassavicum です。 北アメリカ原産の外来植物で、原産地では多年草ですが、日本では1年草または短命な多年草として他の植物があまり生育しないような場所に分布しています。


 ムラサキ科の植物ですので、無限花序(巻繖花序、さそり状花序)です。


 果実は4個に分かれます。 このような分果もムラサキ科ではよく見られます。

 アレチムラサキ(ムラサキ科)の大阪府下への定着については、こちらのCiNiiの論文(オープンアクセス)にまとめられています。

2016-10-26

アシビロヘリカメムシ



 10月23日に大阪市の舞洲で行われた大阪市立自然史博物館の観察会「埋立地の外来生物 秋編」で、上の写真のようなアシビロヘリカメムシ Leptoglossus australis がみつかりました。 写真はポリ袋に入れたまま撮っていますので、くっきりとは撮れていませんが・・・。
 アシビロヘリカメムシは、アフリカ、東南アジア、北部オーストラリア、太平洋諸島などに分布し、琉球列島ではニガウリやヘチマなどのウリ類や柑橘類の果実に大きな被害を与えています。
 このアシビロヘリカメムシはたまたま荷物などについて運ばれてきたものが見つかったのか、既に大阪府下に定着しているのか、気になるところです。

2016-10-24

ホソムジナゴケ


 崖に垂れ下がっているのは、下に書くように中肋に疑問が残るのですが、ホソムジナゴケ Trachypus humilis としておきます。


 葉を密につけています。 葉の長さは1mm前後です。


 平凡社の図鑑では、中肋が葉の中部以上に達するのはムジナゴケで、ホソムジナゴケの中肋は葉の中部以下に終わるとなっています。 葉を数枚見たところ、どの葉も上の写真のように中肋は葉の中部以上に達しているのですが、他の特徴はホソムジナゴケのように思えます。


 葉身細胞は長い六角形、長さは 10~15μmで、たくさんのパピラが見られます(上の写真)。


 葉の先は透明になっています(上の写真)。


 葉の基部の細胞も透明で平滑です。

(2016.10.12. 貴船神社奥の林道)

◎ ホソムジナゴケはこちらこちらにも載せています。


2016-10-23

「苔・こけ・コケ展 2016」のご案内


 日本人の心の深層に深く根ざした「苔」、どこにでもある身近な「こけ」、学問的におもしろい植物である「コケ」、内容豊かに今年も通称「京都コケ展」が開催されます。
 私の写真もパネル展示の予定です。



2016-10-22

ヒメヒラゴケ


 上はヒメヒラゴケ Neckera pusilla です。 木の幹の窪みに生えていて、うまくライティングできませんでしたが・・・。
 写真ではよく分かりませんが、強い光沢がありました。 一次茎は幹に沿って這っていますので写真には写っていませんが、そこから垂れ下がる二次茎は先端部を持ち上げて水平方向に伸びようとしている姿は、他のヒラゴケ属とよく似ています。


 二次茎は不規則に分枝しています。 葉は密に、やや扁平についています。


 葉の長さは 1.5~2mmほどです。


 葉は卵形~長卵形で、先端は広く尖っています。 上の写真では中肋は一見二叉しているように見えますが、上の方は根元が無く中肋ではありません。


 葉身細胞は長菱形~線形で、厚壁です。

(2016.10.12. 京都市左京区 貴船)

◎ ヒメヒラゴケはこちらにも載せています。


2016-10-21

ヤスマツコナジラミ


 写真はヤスマツコナジラミ Pentaleyrodes yasumatsui でしょう。 ヤブニッケイの葉の裏にいました。


 横から光を当てると、葉の毛を含めて高さを強調したような写真になってしまいました。

(2016.10.12. 貴船神社奥の林道)

 こちらには4月に撮ったものを載せていますが、ほとんど違いが無いようです。 どんな生活環なんでしょうね。

2016-10-20

ヨツバゴケ


 上は太い杉の幹の高さ1mほどの所に生えていたヨツバゴケ Tetraphis pellucida です。



 蒴は長さ3mmほど、茎は長さ1~2cmです。


 蒴は円筒形で、蒴歯は4本です(上の写真)。 ヨツバゴケの名前は、「四つ葉ゴケ」ではなく、この蒴歯の様子から、「四つ歯ゴケ」なのだろうと思います。


 上は帽を被った若い蒴です。 帽にはひだが見られます。


 蒴柄の基部は、葉よりも長い包葉に包まれています(上の写真)。


 葉は卵形~卵状披針形で、中肋は葉先近くに届いています。


 葉身細胞は円状六角形です(上の写真)。


 蒴をつけていない植物体(=配偶体)に上の写真のようなものがありました。 茎の先端に幅の広い葉が3~4枚集まってカップ状になっています。 このカップ状の底を覗くようにはうまく撮れなかったのですが、無性芽が入っていました。


 上は無性芽を入れている幅の広い葉を取りだして顕微鏡で見たものです。 無性芽もくっついてきました。
 下はこの無性芽をさらに拡大したものです。


(2016.10.12. 貴船神社奥の林道)

◎ 時期的にこの2ヶ月後に相当する12月中旬のヨツバゴケの様子をこちらに載せています。


2016-10-19

サツマホウオウゴケ



 上はサツマホウオウゴケ Fissidens hyalinus です。 湿った石ころの上に育っていました。


 蒴は頂生しています。 上の写真の最小目盛は 0.1mmですから、上部の葉は 1.8mmほどあります。 平凡社の図鑑では、上部の葉の長さは 1.3~2.1mmとなっています。


蒴は頂生しています。 上の写真の最小目盛は 0.1mmですから、上部の葉は 1.8mmほどあります。 平凡社の図鑑では、上部の葉の長さは 1.3~2.1mmとなっています。


 上は1枚の葉を拡大したものです。 腹翼は明瞭に確認できますが、中肋はありません。 平凡社の図鑑のホウオウゴケ属の検索表で、中肋の無いのはサツマホウオウゴケのみです。


 上は蒴です。 蓋の嘴に泡のようなものがついているように見えたので、さらに拡大したのが下です。


 上は2枚の写真を深度合成(=焦点合成)しています。 蓋の嘴の表面は大きな細胞で覆われているようです。


 上はサツマホウオウゴケの胞子です。

(2016.10.12. 貴船神社奥の林道)