2019-12-10

アゼゴケの造精器


 蒴をつけたアゼゴケ Physcomitrium sphaericum がいちめんに広がっている田がありました。 水切りで土が動かされたせいでしょうか、いろんな生長段階の蒴が見られます。 そんななかで、上の写真の黄色い円で囲んだ所は、株の中心に褐色の小さな粒々が見えます。 このような株があちこちに点在していました。 このうちの1つを拡大すると・・・



 よく見ると、褐色のものの上に透明に近い球状のものがあるように見えます(上の写真)。 そこでこの部分の縦断面を作ってみました(下の写真)。


 形からすると、褐色の棍棒状のものは胞子を出し終えた造精器でしょう。 そして、上から見て透明に近い球形のものには長い柄がついています。 これは・・・
 多くの場合、蘚類の造精器や造卵器は側糸(paraphysis)と呼ばれる組織と混生します。 この側糸はふつう1列の細胞からなる糸状ですが、アゼゴケの場合はこの終末が球状に膨れているのではないでしょうか。
 蘚類の造精器や造卵器は苞葉に守られていることが多いのですが、上の写真では苞葉が見あたらず、代わりに側糸の先端が膨れて保護の役割をしているように見えます。 また、この仲間は雌雄同株のはずですから、造卵器との関係も観察してみたいところです。
 ところで、この仲間の属名 Physcomitrium は、ギリシャ語の physce(空気袋)と mitrium(帽子)に由来しているようです。 この「空気袋の帽子」とは、上記の側糸の端が膨れて生殖器の上を覆っている姿ではないでしょうか。 このあたりのことをいろいろ調べてみたのですが、みつけられませんでした。 どなたか情報をお持ちでしたら、教えていただきたいと思います。

(2019.11.21. 滋賀県高島市)

◎ 若い蒴を持った本種の様子はこちらに、また本種の蒴や胞子の様子はこちらに載せています。

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