2020-03-17
オオサワラゴケ
写真はオオサワラゴケ Mastigophora diclados です。 国内では和歌山県、高知県、南九州、奄美大島などで確認されていて、環境省絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。 平凡社の図鑑では「湿性常緑樹林の林床に生育」とありますが、屋久島では上の写真のようにスギの幹についていました。
上の写真では特に変わったコケのようにも見えませんが、 オオサワラゴケ科に分類されていて、国内では1属1種です。
上は乾いた状態を背面から見ています。 他の多くの茎葉体苔類と同様に、葉は左右に列に規則正しく並んでいるように見えます。 枝の先端はしばしば鞭状になります。 仮根はほとんど目立ちません。
上はいったん湿らせた後、すこし乾いて葉が腹側に巻き込みぎみのところを、腹側から撮っています。 このような状態の腹側を見ると、たくさんの葉があるとても複雑なつくりのようなコケのように見えます。 しかし、赤い四角で囲ったところを見ると・・・
下は上の赤い四角で囲ったところの拡大です。
たくさんの葉のように見えていたのは、じつは葉の裂片で、上の写真では葉が3裂しているのが分かります。 葉(側葉)は倒瓦状に少し重なり、裂片は背側(写真の右方向)ほど大きくなっています。 この記事の2枚目や3枚目の本種を背側から見た写真で、左右に規則正しく並んだ葉のように見えたのは、この葉の背側の裂片だけが見えていたんですね。
下に書くように、このような葉に2裂している腹葉が加わり、一見とてもたくさんの葉があるように見えます。
上は、腹葉を分かり易く、腹側を正面から撮っています。 葉の裂片も腹葉の裂片も三角形で似ているのも、区別を難しくしているようです。
上は葉の上半分で、右が背側の裂片、左が腹側の裂片です。 上の写真では3裂ですが、4裂のこともあるようです。
茎の背側から腹側にかけて斜めにぐるりとほぼ茎を半周している葉を1枚きれいに取り外すことは至難の業で、葉1枚の全体像を撮るのはあきらめました。
上は葉身細胞です。 油体はブドウ房状です。
(2020.3.3. 屋久島 標高約1,000m)
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