2021-02-14

アナナシツノゴケ

 

 写真は、ツノはまだ短いのですが、アナナシツノゴケ Megaceros flagellaris でしょう。 葉状体の縁は鋸歯状になっています。

 上は葉状体の断面です。 葉状体に細胞間隙が無いのは本種の特徴の1つです。
 背面が盛り上がりった中にある色の濃い部分は、ラン藻が共生している所です。 ラン藻が共生している場所はそんなに多くありませんが、その部分を狙って切っています。 上の写真ではこの部分の色が濃すぎてよく分かりませんので、明るくして拡大したのが下の写真です。

 ラン藻(シアノバクテリア)は原核生物(核という構造を持たない)で、この一種が他の細胞に取り込まれて葉緑体となったとされています。 ツノゴケ類の葉緑体は大きいこともあるのですが、それよりずっと小さいことが分かります。
 ところで、上の写真の葉緑体の内部には細かい顆粒が見えます。 これは貯蔵多糖類に囲まれたピレノイドだと思います。 ピレノイドはソウ類には見られますが、蘚類や苔類を含む他の陸上植物には見られないもので、ツノゴケ類がソウ類に近い側面を持つことを示しています。

 上はツノの基部の断面です。 胞子体を包む包膜は葉状体と同じ配偶体の組織で、連続しています。 ツノゴケ類の胞子体には蒴柄がありません。 蒴の中央部に位置する軸柱も、うっすらと見えています。

 上は包膜から外に出た蒴の細胞を蒴の内側から撮っています。 アナナシツノゴケの名前の「孔無し」は、蒴に気孔が無いことに由来し、そのことは上の写真でも一応確認できますが、蒴の外側から細胞を観察した方がはっきりします。 なお、ナガサキツノゴケの気孔のある蒴の様子はこちらに載せています。

(2021.2.11. 箕面国定公園)

◎ アナナシツノゴケはこちらにも載せています。

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