2021-10-29

シマヤバネゴケ

 

 湿岩上で蒴柄を長く伸ばした写真のコケ、まだ蒴柄の伸びていない胞子体もあれば、既に胞子を飛散し終えて倒れてしまった蒴柄もたくさんあります(撮影:2021.10.7. 北八ヶ岳)。

 葉は茎に横~斜めについています。 茎の幅が 0.2~0.3mmほどであるのに対し、葉の幅は 0.5~0.7mmほどあります。 葉の長さは 0.5~0.8mmほどです。

 上は仮根が出ている所が写っていますが、腹葉が無いことを示すために撮った写真です。

 上の写真には4裂した蒴が写っています。 蒴の裂片には多くの弾糸がくっついて残っています。

 上は4裂した蒴の顕微鏡写真です。


 上の2枚は胞子と弾糸です。

 花被は茎に頂生し、紡錘形です(上の写真)。 雌苞葉はいくつかに裂かれています。

 上は花被の口部で、長毛状になっています。

 上は雌苞葉です。 雌苞葉は葉よりかなり長く、上の場合は2裂した裂片がさらに2裂しています。

 上は葉です。 1/2ほどV字形に2裂しており、やや腹側部が大きくなっています。 裂片は鋭頭です。 葉の背縁基部が下延している様子は見られません。

 葉身細胞は方形~五角形的なものが多く、薄壁で、トリゴンはありません(上の写真)。 油体ははっきりしません。

 上は葉を横から見ています。 葉身細胞の表面は平滑です。

 以上の観察結果から、植物体の大きさや葉の形は異なるものの、花被や蒴、細胞の様子などはオタルヤバネゴケによく似ていると思いました。 そこで、Cephalozia(ヤバネゴケ属)だろうと、平凡社のヤバネゴケ属の検索表をたどると、シマヤバネゴケになりそうなのですが、分布は紀伊半島以西となっており、種別の解説もありません。
 紀伊半島以西に分布するコケが北八ヶ岳の標高2000mほどの所には無いだろうと思いながらも、念のためにとネットで検索しても、学名で検索すると画像が1枚ヒットしただけです。 他に観察したようなコケもみつけられず、樋口・古木の「八ヶ岳の蘚苔類チェックリスト」(2018)に載せられているヤバネゴケ科のコケを徹底的に調べるしかないかな、と思いながらリストを見ると、なんとオタルヤバネゴケと並んでシマヤバネゴケ Cephalozia hamatiloba が載っているではありませんか!

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