2022-04-08

オオジャゴケの雌器托と胞子

  ジャゴケの仲間はゼニゴケに似た平たい葉状体をもつ苔類です。 葉状体の表面は鱗を並べたような模様がはっきりしていて、その模様をヘビの体表に見立てて名付けられています。
 ジャゴケの仲間は雌雄異株です。 雄株は、夏から秋に、葉状体の先端に、精子を入れる小判形の雄器托を作ります(こちら)。 雌株は秋に葉状体の先端に、小さな芽のような雌器托を作ります(こちら)。 秋、雄株から出た精子は雌器托の造卵器中の卵細胞と受精します。
 受精卵は細胞分裂を繰り返して胞子体となり、この胞子体の蒴(胞子のう)の中で胞子が作られます。

 上はオオジャゴケ Conocephalum orientalis の早春の様子で、胞子体を抱えた雌器托の柄が急激に伸びます。 日本国内にはジャゴケ属が4種分布していますが(こちら)、オオジャゴケの雌器托の柄は特に長く伸びるようです。

 上は長く伸びた雌器托を斜め下から撮ったものですが、隙間から黒い楕円体が顔を覗かせています。 これが胞子体の蒴(胞子のう)です。 多くの苔類の胞子体は長い柄(蒴柄)を持っていますが、ジャゴケの胞子体の柄は雌器托の傘の中に短いものがあるだけです。

 胞子が熟すと蒴の壁が破れ、胞子が散布されます。 上の写真には、まだ破れていない胞子体も、蒴壁が破れて胞子の散布に役立つ弾糸が見えている状態も、胞子も蒴壁も飛散してしまい蒴壁がめくれあがっている状態も写っています。
 ちなみに弾糸は、苔類以外には、シダ植物のトクサ属や真正粘菌類でも見られますが、これらの起源は全て異なっていて、たまたま似た働きをするものを同じ名前で呼んでいるだけです。

 上は散布された胞子と弾糸です。 本種の胞子は蒴内で細胞分裂を開始し、散布される頃には他種の多くの胞子に比較してとても大きなサイズになっています(右下のスケールを参考に、他の胞子と比較してみてください)。
(本種の胞子と弾糸はこちらにも載せています。)

※ 上はPart1の 2012.4.13.に載せていた記事を全面的に書き換えています。 前半の2枚の写真は 2010.4.4.の撮影ですが、後半の2枚の写真は 2022.4.3.に採集した雌器托を 4月8日に撮影しました。

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