ミズゴケ科ミズゴケ属ミズゴケ節のオオミズゴケ
Sphagnum palustre は、暖温帯のミズゴケとしては最も普通種ですが、水没状態で生育するのは好まないようで、写真のオオミズゴケも小さな流れの縁の水に浸らない所に育っていました。
上の写真、褐色のものが茎で、そこから左右に枝が出ています。 葉(枝葉)は枝に密着していて、この倍率では注意しないと識別できません。
じつはミズゴケの仲間には通常2種類の枝があります。 上に枝と書いたのは「開出枝」で、これとは別に茎に沿って下に伸びる「下垂枝」というものがあります。 上の写真では下垂枝はよく分かりませんが・・・
上は茎にくっついている下垂枝をピンセットで手前に引き出して撮ったものです。
茎には、「茎葉」と呼ばれる葉がついています。 茎葉は透明に近い淡い緑色で、茎の表皮(これも透明に近い色です)にピッタリとくっついていて、茎葉が茎についている様子はうまく撮れませんでした。 また、柔らかく破れやすく、1枚を茎から剥がすのも、なかなか難しいもので、上がその茎葉なのですが、右側の半分少しは失われています。 本来の葉形は舌形で、先端はささくれています。
上は茎葉の一部を拡大したもので、葉緑体を持った細長い「葉緑細胞」と、横線状の肥厚と孔を持った大きな「透明細胞」とからなっています。
上は茎の表皮細胞を観察するために、枝や茎葉を取り去った茎の表皮を剥がしている途中です。 上の写真では表皮は光を反射して白っぽく見えていますが、ほとんど透明です。
上が茎の表皮で、表皮細胞にはらせん状の肥厚があり(ミズゴケ節の特徴の1つです)、孔も見られます。
枝葉に話を戻します。 上は枝の一部を深度合成したもので、枝葉は鱗状についています。
上は枝葉を腹面(枝に面している側)から撮ったものです。 枝葉は広楕円形で深く凹み、葉縁は内曲しています。
上は枝葉の葉縁で、細かい目立たない歯があります。 この葉縁に歯が見られるのも、ミズゴケ節の特徴の1つです。
上の2枚は枝葉の細胞で、茎葉と同様に葉緑細胞と透明細胞からなっています。 透明細胞には横線状の肥厚と孔があります。
上の写真のような倍率にすると、透明細胞の孔と葉緑細胞の両方にピントの合った写真は撮れません。 そのことから、透明細胞の孔と葉緑細胞は顕微鏡のレンズから異なった距離にあることが分かります。 前者は枝葉の背面にあり、後者は腹面にあります(下の写真)。
上は枝葉の横断面です。 曲面から分かるように、写真の上方が腹面(枝に面している側)で、下方が背面です。 葉緑細胞は狭二等辺三角形で、その底辺は腹面側にあります。
透明細胞の孔も断面で見るとよく分かります。 透明細胞には細胞質は無く(=死細胞)、ミズゴケの仲間がたくさんの水を貯えることができるのは、この透明細胞に水を貯めるためでしょう。
(2017.3.8. 滋賀県野洲市妙光寺山山麓)
◎ オオミズゴケは
こちらにも載せています。 また検索表に基づき特徴を整理した記事や、もう少しうまく取れた茎葉の様子などを
こちらに載せています。