2020-02-11
ツツバナゴケ
写真はツツバナゴケ Alobiellopsis parvifolia でしょう。 雌株の群落で、花被が林立しています。
育っていたのは、観察路を広げるために削り取られて新しくできた、水がじんわりしみ出してくる土の表面です。
花被は紡錘形で、上部は3稜になっています。
茎の多くが茎頂に胞子体をつけていますが、それらの茎につく葉は緑色が薄れています。 胞子体をつけていない茎も弱々しく、群落全体が、かなり弱っているように見えます。
大きな群落ですが、個々の植物体は、茎の長さは3~5mm、葉の長さは 0.4mmほどですから(上の写真のスケールの最小目盛は 0.1mm)、肉眼では花被も白い点にしか見えません。
花被を破いて、その内側を観察しました(上の写真)。 若い胞子体の基部近くには、胞子体形成には至らなかった数個の造卵器が白く見えています。 下は上を顕微鏡で観察したものです。
たくさんの造卵器の中で、1つだけから胞子体が育つのは、他の造卵器の受精を妨げるのか、受精卵の生長を阻害するのか、何らかの抑制機構があるのでしょうね。 1つの胞子体を育てるだけで精いっぱいなのに、複数の胞子体が育つと共倒れになってしまいます。
上は胞子体をつけていない茎を背面から見ています。 葉は斜めに開出し、重なっています。
上は腹面から見ています。 ゴミが多くて分かりづらいのですが、赤い楕円で囲った所に腹葉があります。 腹葉は舌形ですが、大きさにはかなりのばらつきがありました。 楕円で囲った腹葉の上(写真では右)にある腹葉は大きく、葉とつながっているようです。
上は茎頂近くの腹葉です。
葉身細胞はほぼ方形で、やや柵状に並び、薄壁で、トリゴンはありません(上の写真)。 油体は楕円体で、微粒の集合です。
本種の葉のつき方などの形態は、下の◎印にあるように、変異が大きいようです。 やはり上のような細胞の形状や油体の様子を観察することが同定に必要になりそうです。
(2020.2.5. 堺自然ふれあいの森)
◎ 胞子体をつけていない、やや幼体っぽいツツバナゴケはこちらに、長く蒴柄を伸ばして蒴を開裂させている様子はこちらに載せています。 見比べると葉のつき方には変異があるようです。
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