2018-10-23

トサカゴケ



 トサカゴケ Chiloscyphus profundus とヒメトサカゴケ C. minor はとてもよく似ています。 平凡社の図鑑では、前者は無性芽をつけず雌雄同株で、後者は無性芽をつけて雌雄異株であることで区別できるとなっています。 また出現頻度については、前者は「ふつう」に、後者は「もっともふつう」に見られることになっています。
 上の写真のコケは、生殖器官は見あたらず、雌雄同株か雌雄異株かは不明ですが、無性芽をつけていないので、トサカゴケということになります。
 無性芽の有無だけでは心配なので、『伊勢神宮宮域産苔類図鑑』(服部,1964)の両者の記載を比較すると、前者は後者より大形で、葉を含めた茎の幅は前者が 2.5mm、後者は 1.5mmということです。 写真のコケで測定してみると、1.5mmでした。 生長の悪いトサカゴケなのか、ヒメトサカゴケも必ず無性芽をつけているとは限らないのか、ますます分からなくなりました。
 しかし、伊勢図鑑を詳細に読み直すと、微妙な記載の違いがありました。 腹葉の幅は、前者が茎の1~1.5倍であるのに対し、後者は茎の1~1.3倍となっています。 また葉身細胞の図を見ると、トリゴンは前者の方が小さそうです。
 このこれらのことを念頭に、このコケを調べていくと・・・


 育っていたのは上のような切り株の上でした。 1枚目の写真は上の写真の中央上の黄色い四角で囲った部分です。 十分育っていない群落のようです。
 なお、このコケを指で擦ってにおいを嗅ぐと、ヒメトサカゴケのにおいがしましたが、トサカゴケでも同様のにおいがするのか否か、調べたのですが、これに関する記載は見つけられませんでした。


 上は腹葉です。 前に載せたヒメトサカゴケ(こちらこちら)に比較して、側歯が発達していて、茎の径の 1.5倍はありそうです。


 上は葉身細胞です。 これも前に載せたヒメトサカゴケよりトリゴンは小さいようです。

 以上の結果から、タイトルは「?」付の(下の追記内容も踏まえ、「?」を外します)トサカゴケとしておきます。

(2018.10.3. 金剛山)

-------(以下、10.25.追記)------------------------------------------------

 下は上のすぐ近くの朽木で撮ったコケで、上と同種でしょう。


 トサカゴケは朽木や倒木上でよく見られ、ヒメトサカゴケは樹幹でよく見られるという話もお聞きしました。

こちらではトサカゴケの胞子体やその関連機関を中心に載せています。


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