2021-07-27

ツノゴケモドキ・ヤマトツノゴケモドキ

 上は、京都府精華町のけいはんな記念公園で 2021.7.23.に撮影した写真ですが、以下の観察結果から、ツノゴケモドキ Notothylas orbicularis のようです。
 Notothylas(ツノゴケモドキ属)の胞子体は成熟するまで包膜に包まれています。この包膜は、ニワツノゴケナガサキツノゴケなどのように葉状体から立つのではなく、葉状体にくっつくように倒伏します。
 この仲間の葉状体は波打っていますが、上の写真の①の所は特に盛り上がっていて、その中にうっすらと黄色いものが見えます。 これが胞子体を中に包み込んでいる包膜です。 調べていませんが、②もその可能性大ですし、もしかしたら③もそうかもしれません。

 上は最初の写真と同じですが、断面を観察するために赤い線て示した所にカミソリの刃を入れてプレパラートを作成しました。 それが下の写真です。

 包膜に保護された胞子体が確認できました。 葉状体の腹面にはたくさんの細い仮根があり、それが土をくっつけています。

 断面の近くには胞子が散らばっていました。 胞子体が未熟で、上の写真の右上のような減数分裂途中の細胞もありましたが、左下が胞子です。 本種の胞子は黄色で、径約40μm、求心面にY字条溝があります。 その上にある胞子も、少しいびつな形になっていますが、同様です。

 上は葉状体背面の細胞です。 大きな葉緑体が各細胞に1個(~数個)あるのは、他のツノゴケ類と同じです。

 平凡社の図鑑では、Notothylas(ツノゴケモドキ属)として、ツノゴケモドキ、ヤマトツノゴケモドキ、ジャワツノゴケモドキの3種が載せられています。
 上のツノゴケモドキのすぐ近くで、ヤマトツノゴケモドキもありました。 ちなみに両者の分布は、ツノゴケモドキの方が少し北に偏っていて、関西ではヤマトの方が多いようです。 なお、ジャワツノゴケモドキは四国と九州の分布です。

 上がそのヤマトツノゴケモドキ Notothylas temperata です。 私は以下の観察からツノゴケモドキと区別できましたが、Mさんは現地でルーペで違いを見分けておられました。 さすがです。
 上の植物体には、胞子体を内包したたくさんの包膜が確認できます。 下はこの断面です。

 今回は反射光で撮影してみました。 包膜に保護された胞子体が確認できます。

 上は断面作成時にこぼれ出た胞子で、黒褐色です。 平凡社の図鑑の検索表で重視されている蒴壁の開裂線の有無は、蒴が若い時には使えませんが、胞子の色で区別できます。

 上は葉状体背面の細胞です。 これもツノゴケモドキとほとんど変わりません。(上の写真で波打っている細い糸状のものはゴミです。)

◎ ヤマトツノゴケモドキはこちらにも載せています。


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