2021-08-08

タカネカモジゴケ

 写真はタカネカモジゴケ Dicranum viride var. hakkodense です。 秋田県・乳頭温泉郷の近くの標高約700mの樹幹についていました(撮影:2021.7.7.)。

 ほとんどの葉の先が折れて無くなっているのは、この種の特徴の1つ(注1)。 葉先まで残っている葉の長さは3mmほどです。 上の写真の蒴柄の長さは7mm、蒴は直立し相称で、帽を含めた蒴の長さは約3mmです。
(注1) シッポゴケ科で葉先が折れ易い種は、他にもミヤマシッポゴケ、フジシッポゴケ、ヒロスジツリバリゴケなどがあります。

 帽は僧帽形、蓋には長い嘴があります(①:上の写真)。 蒴が若く、蒴柄の観察はできませんでした。

 蒴の頸には気孔があります(②:上の写真)。

 上は葉の基部で、翼部が明瞭に分化しています(③)。 葉はかたくてもろく、上の写真でもあちこちに裂け目が入っています。
※ ①~③は Dicranum (シッポゴケ属)の特徴です。

 上は葉の基部の横断面で、中央の中肋から左右に翼部が広がっています。 本種の翼部は1細胞層です。 下は同じ倍率の翼部から少し上の横断面です。 翼部の細胞と葉身細胞の違いが横断面でも分かります。

 中肋はステライドが明瞭で、幅は葉の幅の1/3以下です。(平凡社の検索表で、1/3またはそれ以上であれば、フジシッポゴケになります。)

 上は葉の下部の葉身細胞です。

 上は最初から2枚目の写真の一部と同じ場所です。 葉の先に細い褐色のものがついています。 最初は葉先が枯れていると思ったのですが、硬くてもろい葉がこんなふうに枯れるのか、ひっかかっていました。 念のためにと顕微鏡で観察(もちろん水で封じますので湿った状態になります)すると・・・

 葉先が枯れているのではなく、葉先は失われ、葉の組織内から細いものが伸び出しています。 この細いものは、上では2本、他の葉を見ると3本の場合もありましたが、仕切りがあることから、とても細長い細胞のように思われます。 これが何かを確認するため、赤い線の所で切って横断面を調べたのが下です。

 伸び出していたのはガイドセルなんでしょうか。 周囲の細胞は細胞壁が硬くて折れ、柔らかい細胞壁のガイドセルが残ったのかもしれません。
 これまでこのブログでは本種を2回載せていますが、このようなことには気づきませんでした。 しかし改めて見直してみると、こちらにも同じような写真を載せていました。

こちらには、今回触れられなかった葉の上部の葉身部が2細胞層になっていることなどを載せています。

 

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