2021-09-03

ナガエノシッポゴケ

 

 写真のコケ、以下の観察結果を基に平凡社の図鑑の検索表をたどると、簡単にナガエノシッポゴケ Dicranum undulatum になるのですが、平凡社には検索表にあるのみですし、保育社には名前がありません。
 湿った岩上で、コバノスナゴケなどに囲まれ、マツバウロコゴケに絡まれ、小さな群落を形成していました。 比較的大型のコケで、数本の枝を出し、葉は混み合ってついていて、葉の長さは6~7mmあります。

 上は乾いた状態です。

 英語の「undulate」は「うねる」や「波打つ」といった意味ですが、学名の種小名が示すように、葉には横じわが見られます(上の写真)。

 混み合っている葉を整理して茎が見えるようにすると(上の写真)、白い仮根が確認できます。

 葉は披針形で、中肋は葉頂に達しています(上の写真)。

 葉先では葉縁にも中肋にも歯が見られます(上の写真)。 下は上より少し下の横断面です。

 葉縁には歯の膨らみが見られます。

 上は葉先から1/3ほどの所の背面で、中肋の細胞には所々円鋸歯状のちいさな膨らみ(マミラ?)が見られますが、全体的には平滑で、少なくとも刺状のパピラは見られません。

 上は葉先から1/4ほどの所の葉身細胞です。 丸みを持った長方形や菱形や形のいびつな細胞が混じっています。 細胞は厚壁で一様に肥厚し、くびれは見られません。

 上は葉先から2/3ほどの所の葉身細胞です。 細胞は細長くなっています。

 上は葉先から2/3ほどの所の葉の横断面(一部)です。 中肋はステライドが明瞭です。 中肋の背面や葉身の細胞表面は平滑です。

 上は写真左上の赤い丸印をつけた所の葉身細胞で、細胞壁にくびれが見られます。

 上は葉の基部で、翼部の細胞はよく分化しています。

 上は葉の基部の横断面(一部)です。 翼部の大部分は2細胞層になっています。

(2021.7.16. 長野県 八方尾根)

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