2018-08-31

マダラエグリバ


 上はマダラエグリバ Plusiodonta casta の幼虫でしょう。 食草のアオツヅラフジの葉を食べています。 ヤガ科エグリバ亜科に分類されていて、シャクガ科ではありませんが、まるでシャクトリムシの姿です。
 白と黒の体の色は鳥の糞に擬態しているのでしょうね。

(2018.8.29. 堺自然ふれあいの森)

 この機会に、Part1の 2013.8.16.に載せていた成虫の写真をこちらに引っ越しさせておきます。



 成虫は春から夏に出現します。 写真のマダラエグリバは羽化したばかりのようで、とても美しい色をしています。

(2013.8.11. 堺市南区槙塚台)

2018-08-30

シンジュ(ニワウルシ)の花外蜜腺


 シンジュ(ニワウルシ) Ailanthus altissima の葉にたくさんのアリがいました。 上の写真には2種のアリが写っているようですが・・・



 ほとんどのアリはアミメアリ Pristomyrmex punctatus でした。 上の2枚の写真のようにアリがなかなか離れようとしない所を、アリを追い払って撮ると・・・


 シンジュの葉は羽状複葉ですが、その小葉の基部近くにある葉縁に小さな膨らみがあり、そこから蜜が出ているようです。 これは花外蜜腺でしょう。
 花外蜜腺については、これまでに何度か書いていますが(最近の記事ではナタマメ)、葉などを食害する虫をアリに追い払ってもらおうと、植物が花以外の所から蜜を出してアリを呼び寄せているようです。 シンジュの場合は、上のような小さな膨らみは全ての小葉で確認できますが、実際に蜜を出しているのは、私の限られた観察では、若木の柔らかい若い葉のみのようです。

 以下、シンジュ(ニワウルシ)のことをもう少し書いておきます。


 上の写真がシンジュです。 中国北中部原産のニガキ科の落葉高木で、日本には明治初期に渡来しています。 野蚕の一種のシンジュサンの養蚕目的に栽培されたことがあり、現在では各地で野生化しています。 和名のシンジュ(神樹)もシンジュサン(神樹蚕)の食樹であることによる名前でしょう。
 別名のニワウルシは、葉の広がり方がウルシ(ウルシ科)に似ているところからで、ウルシとは関係なく、もちろんかぶれる心配もありません。

(2018.8.28. 堺市南区岩室)

2018-08-29

ミカドトックリバチの交尾


 ヨウシュヤマゴボウの花に交尾中のトックリバチがいました。 トックリバチの仲間も15種ほどいるようで、体形が似ているうえに模様の個体差があり、なかなか難しいのですが、たぶんミカドトックリバチ Eumenes micado だろうと思います。


 上で「交尾中の」と書きましたが、未だ交尾には至っていないようです。 メスは蜜を舐めるのに集中し、オスはメスの背に必死でしがみついているようです。


 胸部の後ろと前伸腹節の様子が分かるよう、斜め後ろからの写真も載せておきます。


 何枚か撮っていると、カメラが気になったのか、花を離れて下の葉に降りました。 そこを正面から撮ったのが上の写真で、上がオス、下がメスです。

 交尾中の昆虫の撮影には2つのメリットがあります。 1つは逃げられる確率が低いこと、もうひとつは模様や形態が違っても同種であることや、雌雄の違いを示してくれていることです。

(2018.8.29. 堺自然ふれあいの森)

2018-08-28

ノミハニワゴケの基物


 クスノキの若木の幹についていた2種類のコケ、2018.8.28.に堺市南区岩室で撮影しました。


 上は1の拡大、下の2枚は2の拡大です。(拡大率はほぼ同じです。)




 番号1のコケはフルノコゴケだとすぐに分かりましたが、番号2のコケはルーペでは小さすぎ、持ち帰って調べました。


 葉は小さく、中肋はかなり上まで伸びているようですが、どこまで伸びているのか、よく分からないので・・・


 上は、コンペンセータ(検板)に鋭敏色板(λ=530)を使った偏光顕微鏡で撮ったものです。 中肋を構成している細胞は葉身細胞より細長く、葉の先の長く伸びた所では、この細胞ばかりになっています。 つまり中肋は長く突出していることになります。


 上の写真は葉の背面で、右上が葉先側になりますが、葉身細胞の上端にパピラがあります。
 以上のことから、このコケはノミハニワゴケ Haplocladium angustifolium でしょう。

 本種はこれまでに何度か載せていますが、こちらは倒木上にあったものですし、こちらは岩上です。

2018.4.26. 堺市南区鉢ヶ峯寺

 上の写真は、水が伝う道路の側溝のコンクリートの壁面に育っていた本種を上から撮ったもので、下(写真では右側)は流れている水です。

2018.3.23. 堺自然ふれあいの森

 また、堺自然ふれあいの森では、3月から4月にかけて、広い面積を覆う本種の赤い蒴柄が目立ちます(上の写真)。

 このように、本種の育っている所を見なおしてみると、木の幹、倒木(朽木)上、岩上、コンクリート(アルカリ性)上、土の上と、じつに様々です。
 多くのコケでは育つ所が限られているのに、こんな生育場所を選ばないコケもあるのですね。

2018-08-27

カタモンオオキノコ

 Part1の 2013.9.28.からの引っ越し記事です。(一部変更しています。)
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 サルノコシカケ科と思われるキノコの隙間に、交尾中のカタモンオオキノコ Aulacochilus japonicus がいました。
 カタモンオオキノコはオオキノコムシ科に分類されています。 産卵は樹幹に行うようです。

(2013.9.21. 堺自然ふれあいの森)

2018-08-26

ツマグロスケバ

 Part1の 2013.8.22.からの引っ越し記事です。(一部変更しています。)
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 上はツマグロスケバ Orthopagus lunulifer の幼虫でしょう。 複雑な色彩と模様で、最初見た時は、どこがどうなっているのか、よく分かりませんでした。


 上は斜め横から撮ったもので、口吻を茎に刺しています。 ツマグロスケバはテングスケバ科の昆虫で、もう少し広い範囲で捉えれば、ヨコバイの仲間です。


 上は横から撮ったものですが、この角度から見ると、複眼がはっきりします。
 ところで、上の写真の背景にある黒い斜め線は・・・


 じつはすぐ近くにベッコウハゴロモの成虫がいました。 同じような複眼の模様を持った2種が左右に並んでいたのですが、単なる偶然でしょうね。

(以上、2013.8.21. 堺自然ふれあいの森)


 上はツマグロスケバの成虫を横から見たところです。 ツマグロスケバを漢字で書くと褄黒透翅で、透明な翅の端(褄)が黒いという意味です。 撮影は別の年ですが、8月20日ですので、同時期に成虫も幼虫もいることになります。
 下は成虫を上から見たところです。




2018-08-25

ヨツボシホソバの幼虫



 上はヒトリガ科コケガ亜科のヨツボシホソバ Lithosia Fabricius の幼虫でしょう。 色は異なりますが、毛の生え方はドクガ科の幼虫に似ていて、やはりこの幼虫も毒針毛を持っているようです。


 毛を拡大してみました(上の写真)。 毛は細かく枝分かれしています。

(以上、2018.8.17. 堺自然ふれあいの森)

 参考までに、成虫も下に載せておきます。


 上はヨツボシホソバのオスです。 和名の「四つ星」は上の写真でも分かりません。 じつは・・・

 上はメスです。 メスの左右の前翅は、黄色の地に2つずつ黒い紋(=星)をつけています。 ただし静止時には左右の前翅を重ねていますので、上の写真では紋は3つしか見えていません。
 このようにオスとメスはまるで違う種類のようにも見えますが、胸部の色は同じですし、写真では分かりませんが、腹部の色も同じです。

 

2018-08-24

マドガ




 写真はマドガ Thyris usitata でしょう。 和名の「マド」は、翅の中室にある半透明の白色斑を窓に見立てたもので、属名もギリシア語の「窓、入口」に由来します。 ちなみに種小名はラテン語の「普通の」です。
 マドガは前にも載せていますが(こちら)、今回は側面からも撮れましたので、再登場です。

(2018.8.17. 堺自然ふれあいの森)

インスタグラムに写真を載せはじめました

 以前からインスタグラムを他の人の写真を見るためには使っていたのですが、試しに写真を数枚載せてみました。
 載せてみて、1枚の写真を多角的に検索できる便利な道具として使えることに気がつき、どこでも使える自分用の検索のための道具として活用することにしました。
 このブログもブログ本来の使い方ではなく、「電子図鑑+ブログ」のようになっていますが、インスタグラムも、SNSというよりは、写真データベース的にしていこうと思っています。(データの蓄積は気長にやっていきます。)
 いちおうアドレスも公開し(下記)、写真もどなたでも検索できるようにしておきますが、上記のような目的ですので、いわゆる「インスタ映え」するような写真は期待しないでください。
https://www.instagram.com/sakky.jp/

2018-08-23

このコケは?


 薄暗い渓流脇の、いつも水が滴る崖にあった写真のコケ、持ち帰って調べてみると・・・



 葉は長さ1mmほどですが、見当がつきません。 中肋の端がはっきりしているので拡大してみると・・・


 中肋背面の端は歯で終わり、中肋上にもあちこちに歯があります。 このような特徴を持つ葉でまず頭に浮かぶのはツクシナギゴケやツクシナギゴケモドキなどの Eurhynchium属ですが、全体の姿も1枚の葉の大きさも形も、私の知っている姿ではありません。

 図鑑をいろいろ調べてもよく分からないので、大阪市にある自然史博物館で8月19日にあった特別行事「標本の名前を調べよう」で見てもらったところ、なんと、ツクシナギゴケ Eurhynchium savatieri でした。
 平凡社の図鑑には「( Eurhynchium属は)変異が大きく同定はむずかしい。」とありました。 個体の変異の大きさに加えて生育環境が良好ではなく、かなりいじけていたようです。

(2018.8.17. 堺自然ふれあいの森)

◎ よく見る姿のツクシナギゴケはこちらなどに載せています。


2018-08-22

ヤマノイモ

 Part1の 2013.8.21.からの引っ越し記事です。(一部加筆訂正しています。)
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 ヤマノイモ Dioscorea japonica は、ジネンジョ(自然薯)、ヤマイモ(山芋)などとも呼ばれ、栽培もされています。(長芋は同じヤマノイモ科ヤマノイモ属の植物ですが、中国原産の別種です。)
 これまで、オニドコロヒメドコロカエデドコロなどのヤマノイモ科の植物について書いてきましたが、ヤマノイモについてはまだ載せていませんでした。 ヤマノイモも今が花の時期です。


 ヤマノイモの葉は対生です。 ヤマノイモも雌雄異株で、上は雄株です。 雄花序は上方に伸びます。


 上はヤマノイモの雄花です。3枚の白いガク片の内側に、少し小さい3枚の白い花弁が見えます。 雄花はもうこれ以上は開きません。 甘いにおいで虫を誘い、花弁の細い隙間から出入りできるアザミウマ(注1)などの小さな虫によって花粉媒介が行われているようです。


 雄花の内部を確認するために、手前のガク片2枚を除去し、花弁1枚を押し下げたのが上の写真です。 緑色のオシベからは、ちゃんと花粉が出ています。 花弁はかなりの厚さで、内部をしっかりガードしているようです。


 写真を撮り始めてすぐに、シベリアカタアリが蜜を求めてやってきました(上の写真)。 ヤマノイモの花の蜜は、虫たちにとっては、なかなか魅力的な蜜のようですが、ヤマノイモはほんの一部の虫にしかその蜜を飲むことを許していないようです。 だから虫たちは花を外からかじるのでしょう。 ヤマノイモの雄花序を見ると、1枚目の写真の茶色く見えている部分のように、かじられた花がたくさんあります。


 上はヤマノイモの雌株です。 ヤマノイモの雌花序も、他のヤマノイモ属の植物同様、下垂します。


 上はヤマノイモの雌花です。 ヤマノイモでは雌花もそんなに開きません。


 上はヤマノイモの雌花を正面から撮ったものです。 雄花同様、3枚の白いガク片の内側に3枚の白い花弁があります。 雄花よりはよく開いていますが、いちばん開いた状態でこの程度です。 内側には枝分かれしたメシベの柱頭が見えます。 またピントは合っていませんが、退化したオシベも写っています。


 上は9月中旬に撮ったヤマノイモの雌株です。 ヤマノイモはむかごを作ります。 ヤマノイモのむかごは芽が栄養分を貯め込んで肥大化したもので、これが落ちると、そこから新たなヤマノイモが生じます。 上のむかごは少し根を出しはじめています。
 上の写真でもうひとつ注目したいのは、果実の向きです。 これまで書いてきたように、多くのヤマノイモ属では、雌花は最初ほぼ横向きに咲き、子房が発達しはじめると上を向きます。 ところがヤマノイモでは、果実になっても下を向いたままです。

(撮影日は最後の1枚を除いて 2013.8.18. 撮影場所は全て堺自然ふれあいの森)