2018-12-16

トサカホウオウゴケの葉縁が明るい帯になっている理由


 上はトサカホウオウゴケ Fissidens dubius です。 濡れているのは未明までの雨の影響もあるでしょう。


 トサカホウオウゴケはこれまでに何度か載せていますが、今回のものは枝分かれが比較的多いようです。 そのことはともかく、本種の特徴はもう少し拡大してみないとはっきりしません。


 上は顕微鏡で撮った葉の先の部分です。 トサカホウオウゴケの顕微鏡レベルの特徴として、葉先近くの葉縁が鶏のとさかのような鋸歯があることや、葉縁が明るい帯になっていることなどが挙げられます。 今回はこの葉縁が明るくなっている理由を調べてみました。


 細胞壁の厚さに注目すると、明るく見えている所の細胞壁が厚くなっていることが分かります。


 上は葉の上部の(=上翼と背翼の)横断面で、右下の太い所は中肋です。 葉縁に近い所は表面が滑らかであるのに対し、暗く見える所は細胞が2層の(=厚い)所が多く、細胞壁が薄く細胞質が多いので葉緑体も多く(=光をよく吸収)、表面がマミラ状で凸凹しています(=乱反射し易い)。
 下は、上記のことを確認するために、もう少し拡大し、偏光で細胞壁を光らせて撮ったものです。


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 上は中肋の断面を偏光で撮ったものですが、髑髏のようにも見えておもしろいので載せておきます。 眼窩(がんか)のように見える所は、水分の通導の役割をすると考えられているガイドセルで、その上下には小型の厚壁の細胞が集まって強度を保つ役割をしていると考えられるステライドが見られます。

(2018.12.12. 西宮市名塩)

◎ トサカホウオウゴケの雌株の蒴の様子はこちらこちらに、雄株の様子などはこちらに、葉の長さなどはこちらに載せています。



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