上はゼニゴケ Marchantia polymorpha です(撮影:2020.5.29. 大阪府豊能郡豊能町 初谷)。 中央部に黒い線が入っていますが、このような線が見られない場合の方が多いでしょう。
ところで、ゼニゴケの変種にヤチゼニゴケ M. polymorpha var. aquatica があります。 和名のとおり谷地(やち=湿地)に生育し、中央部の黒い線が明瞭です。 珍しいコケですし、杯状体をめったにつけないコケですから、上の写真のコケはこの変種ではなく、母種のゼニゴケでしょう。 しかし両者の違いを決定づけるのは、腹鱗片の付属物の形態の違いです。 この機会にゼニゴケの腹鱗片を観察しました。
上は1枚目の写真のゼニゴケを腹面から撮っています。 ゼニゴケの腹鱗片はほぼ6列に並んで腹面いちめんにあるはずですが、この腹鱗片はよほど条件が良い時にしか判別は不可能です。 しかし腹鱗片の上縁に付属物がついていて、この付属物は有色のことが多く、存在の確認が容易です。 今回は赤い円で囲った腹鱗片の付属物を観察しました。
なお、上の写真で、たくさんある白い糸状のものは仮根です。 仮根は腹鱗片のあちこちの細胞から出て次第にまとまって束になっていきます。
上の赤褐色に薄く染まっているのが腹鱗片の付属物です。 腹鱗片と重なり、あまりいい写真とは言えませんが・・・。
ゼニゴケの腹鱗片の付属物はほぼ円形で、縁に鋸歯があります。 ヤチゼニゴケの腹鱗片の付属物は縁に鋸歯は無く、中央部より小さな細胞で縁取られています。
なお、上の写真で左上に伸びているのは仮根(有紋仮根)です。
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ゼニゴケについては、さすがに(?)身近な所にある苔類の代表で、これまでいろんな所でいろんなことを書いてきました。 どこで何を書いてきたのか、私自身見返す時に不便を感じるようになってきましたので、下にまとめてみました。 (ゼニゴケの仲間に関することは省いてあります。)
このブログのゼニゴケに関する内容一覧
(クリックでそれぞれの内容にジャンプします)植物体(葉状体)に関して
気室と気室孔
腹鱗片の付属物 本稿
無性生殖に関して
杯状体(無性芽器)と無性芽
杯状体の断面と無性芽の顕微鏡レベルの観察
有性生殖に関して
有性生殖の概略
雄器托、雌器托と胞子体
精子
造卵器
受精のみちすじ①(仮根の働き)
受精のみちすじ②
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