② 雌器托の柄
前回の①では雌株の葉状体での精細胞の移動を考察しましたが、②では精細胞が卵細胞にたどり着くためには登らねばならない雌器托の柄のつくりについて書くことにします。
上は雌器托が立ち上がっている際を狙って葉状体の断面を作ったものです。 前回、葉状体の腹面には有紋仮根の束が走っていることを書きました。 有紋仮根の束だと確認できるのは顕微鏡レベルなので、上の写真では確認は無理ですが、その束がそのまま雌器托に向かっていることが何となくわかると思います。 じつは雌器托の柄は葉状体と組織的に非常によく似ていて、雌器托の柄は葉状体が細長く徒長したものと見ることもできます。 つまり雌器托の柄には表裏があり、表裏の無い種子植物の茎などとは全く異なったものです。
上は雌器托の柄の横断面です。 断面写真の上方には緑の濃い表皮組織の存在が目立ちます。 断面の下方にある一対の丸い所は鱗片に囲まれた有紋仮根の束が通っている所です。 この断面を作る時にカミソリの刃が組織を引きずる形で断面右下は斜めに切れてしまい、そのために有紋仮根の束がきれいな断面にならずに仮根が引っ張り出されたようになっています。
下はこの鱗片に囲まれている有紋仮根の束の断面を拡大したものです。
この雌器托の柄の先にある雌器床は緑色をしていて光合成をしています。 光合成の材料として水が使われます。 また蒸散作用もあり、水はこの有紋仮根の束の毛管現象により、雌器床へと上昇していくでしょう。 この水の動きに精細胞が紛れ込めば、精細胞は楽に上昇して行けるはずです。
③ 雌器床
結論から書きます。 雌器床も、指状突起に“枝分かれ”してはいますが、基本的なつくりは葉状体と同じで、指状突起は葉状体が内曲し、筒状になったものとみることができます。
下は雌器床が指状突起に分かれる手前の断面を見たもので、背面には表皮組織が見られ、中央には雌器托の柄から続く有紋仮根の束があります。
この仮根束を精細胞が通ってくれば、精細胞は造卵器のすぐ近くに来ることができます。
【 まとめ 】
下は前回の①の内容を含めた以上の内容を模式化した図です。 赤で示した有紋仮根の束a、b、cは連続しています。
雌株の葉状体の縁にある精細胞は、この連続した有紋仮根の束で生じる毛管現象によって、造卵器にたどりつくことができるのでしょう。
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