2024-09-27

花被をつけたフォーリーイチョウゴケ

 写真はフォーリーイチョウゴケ Lophozia longiflora でしょう。 コアミメヒシャクゴケの群落にほんの少し混じっていました。 北海道~九州の亜高山帯以上に分布するコケです(2024.8.25.北海道・上士幌町 標高800m付近で撮影)。

 葉がゆるく重なるコケですが、他のコケに覆われて徒長気味のようです。 葉は1/4~1/3までV字形に2裂し、裂片は三角形で鋭頭です。 平凡社によると、葉の長さは0.6~1㎜、幅0.4~0.7㎜になっています。

 上は葉身細胞です。 トリゴンは大きく、油体は球形~楕円形で微粒の集合です。 ピントの合っていない油体は白くみえています。

 花被は長卵形で、口部に近い所は多稜になっています。 口部に嘴はありません。

 花被の口部には上の写真のような長毛があります。

 上は雌苞葉です。

◎ フォーリーイチョウゴケはこちらにも載せています。

2024-09-23

エゾスギゴケ

 Polytrichum(スギゴケ属)の蒴をつけ、ウマスギゴケやオオスギゴケほどは大きくない写真のコケ、エゾスギゴケ P. ohioense です。 北海道~四国に分布します。

 上は左が湿った状態、右が乾いた状態です。 こちらのエゾスギゴケは乾くと葉が少し縮れていましたが、上では乾くと葉が茎に接しています。 個体差なのか生育環境なのでしょうか・・・。

 上は蒴です。 壺は角柱状です。

 上は葉です。


 上の2枚は葉の中央と葉縁近くの横断面です。 薄板の高さは4~5細胞、端細胞は扇形で上壁はほぼ平ら(~少し凹む)です。

 上は葉を腹面から撮った写真で、上が葉先の方向です。 薄板の端細胞を上から見ていることになりますが、端細胞は横長です。

(2024.8.25. 北海道 然別湖の近く)

2024-09-22

ナミガタタチゴケの生殖器官

 伸び始めた蒴をつけたナミガタタチゴケ Atrichum undulatum がありました。 本種は雌雄同株(異苞)です。 写真のような時期なら胞子体の他に雄器も確認できるのではないかと思い、確かめてみました。

 上は茎頂付近の手前の葉を取り除いて撮った写真です。 写真の水色の円がいくつかの造卵器のあった所で、そのうちの1つの造卵器の卵細胞が受精し、胞子体の蒴柄を伸ばしています。 そして赤い楕円形で囲った所が、頂に造精器をつける短枝なのですが、雄苞葉や鱗片葉に覆われ、造精器は見えていません。 これらの小さな葉を取り除くと・・・

 先が少し赤っぽく染まったバナナのような造精器がみえました(上の写真)。 下はこの造精器を顕微鏡で確認した写真で、側糸も写っています。 胞子体がこれだけ生長している時期ですから、もちろん精子は入っていません。

(2024.8.25. 北海道 然別湖近く)

こちらには本種の蒴歯の様子などを、こちらには葉の横断面などを載せています。

2024-09-20

ススキゴケ

 写真はススキゴケ Dicranella heteromalla でしょう。 伐採木についていました。 蒴柄は湿ると上の写真の程度まで屈曲します。

 上の植物体は上下が逆ですが、この方がデザイン的におもしろいので・・・。 蒴柄は黄色です。

 多くの葉は長さ約 2.5㎜ですが、蒴をつけていない茎の頂付近の葉は上の写真のように少し長くなります。
 葉は三角形の基部から漸尖して長く伸び、中肋は葉の基部の幅の約1/3で、葉身上部の大部分を占めています。 上方の葉縁には細かい歯があり、翼部の分化は見られません。

 上は葉の横断面で、ガイドセルの背側にも腹側にもステライドがあります。

 蒴は乾くと蒴口が斜めになります(上の写真)。

 蒴歯は上部が2裂し、細かいパピラに覆われています(上の写真)。 壺の細胞は細長く、気孔はありません。

 上は蒴歯の基部です。 口環があり、蒴歯の下部ではパピラが縦に並び条のようにみえています。

(2024.8.25. 北海道 然別湖に沿った遊歩道)

◎ 下はこれまでに載せたススキゴケです。
 180329 → 蒴を正面から
 160217 → 蒴の外見など
 150620 → 葉の細胞など

2024-09-18

ミヤマチリメンゴケ


 写真はミヤマチリメンゴケ Aquilonius plicatulum のようです。 北海道・然別湖の近くで樹幹についていました(撮影:2024.8.25.)。
 本種は平凡社ではハイゴケ科のHypnum(ハイゴケ属)とされていますが、現在ではキヌゴケ科のミヤマチリメンゴケ属(新称)となっています。

 這う茎からやや規則的に羽状に枝が出ています。 葉はやや扁平につき、枝葉は強く鎌状に曲がり、茎葉も乾くと葉先が下方に曲がります。

 上は茎葉です。 長さは 0.8~1.2㎜、基部は丸みを帯び、上の写真にはありませんが、基部が耳状になっている葉も見られました。

 翼部の細胞はほとんど分化せず、少数で小形、透明で、その上に小形で方形の細胞が少数あります(上の細胞)。

 上は葉身細胞です。

 上は茎の横断面です。 中心束があり、茎の表皮細胞はそれより内側の細胞より大形、透明で、外側の壁は薄くなっています。

 蒴柄の長さは上の写真では約15㎜、平凡社では10~15㎜となっています。

 蒴は長卵形で曲がり、乾くと縦じわができます(上の写真)。

◎ ミヤマチリメンゴケはこちらこちらにも載せています。

2024-09-16

コアミメヒシャクゴケ(コヒシャクゴケ)

 写真のコケ、平凡社の検索表や尼川の図からはコヒシャクゴケになると思うのですが、現在コヒシャクゴケはコアミメヒシャクゴケ Scapania parvitexta と同種として扱われています。

 1枚目の写真ではほとんど緑一色のようですが、群落の断面で見ると、あちこち赤みを帯びています。 茎の長さは1cm前後、葉を含めた茎の幅は1.5~2㎜です。


 上の2枚は葉です。 背片と腹片の大きさの差はあまりありません。 腹片は円頭です。 葉縁には小さな歯が並んでいます。

 上は葉の断面で、写真の左端の中央がキールです。 キールに翼はありません。

 上は葉身細胞です。 歯は1~3個の細胞からなっています。

 上は花被です。

 上は花被の口です。

 上は茎の横断面です。

(2024.8.25. 北海道 然別湖に沿った道 標高約800m)

◎ コアミメヒシャクゴケ(コヒシャクゴケ)はこちらこちらにも載せています。

2024-09-15

タカネハネゴケ

 写真はタカネハネゴケ Plagiochila semidecurrens のようです。 朽木の上で育っていました。 上の写真のように葉が垂れ下がるのが本種の特徴の1つだと聞きました。

 葉は背片が強く外曲しています。

 葉縁に歯がありますが、背縁の歯は小さく少数です。

 葉の基部にはビッタ状の細長い細胞があります(上の写真)。


 上は葉身細胞です。 大きなトリゴンがあります。

 上は茎の横断面です。 ハネゴケ属の茎は皮層細胞が厚壁で、髄細胞とは明瞭に異なります。

(2024.9.7. 北八ヶ岳)

◎ タカネハネゴケはこちらにも載せていますが、枝分かれの様子などが異なります。 生育環境によるものでしょうか。