上の写真は主に2種のコケが混生しています。 葉を含めた茎の幅が広いのはタカネツボミゴケですが、細い方は葉が複雑に入り組んでいるのですが、下の写真のようなサイズで、実体双眼で調べるには小さすぎ、顕微鏡で調べるには大きすぎて、どのようなつくりになっているのかよく分かりません。
とりあえずいろんな方向から写真に撮って、写真で拡大してみました。
上は湿った状態で、見え方が異なる状態を並べて撮った写真です。 仮根の良く見える方が腹面でしょう。 茎の4方向に葉がついているように見えますが、そんな苔類があるはずもなく、茎の左右の葉がそれぞれ2裂しているのでしょう。 1枚の葉を取り出してみると・・・
葉縁には歯があります。 葉がほぼ同じ大きさに2裂しているのでミゾゴケの仲間ではないかと思い、図鑑で調べても写真のようなコケはみあたりません。 この段階でM氏に助け舟を依頼。 氏からは Scapania(ヒシャクゴケ属)ではないかと回答いただきました。
ヒシャクゴケの仲間の葉は背片と腹片に分かれ、腹片が背片より大きいことが知られています。 上のように裂片がほぼ同じ大きさのものがあるとは知らず、候補から外していたのですが、改めて調べ直してみると・・・
上は乾いた状態ですが、再度側面から撮り直してみると、たしかにヒシャクゴケ属らしい姿をしています。 ヒシャクゴケ属は似たものが多く分類が難しいグループですが、コヒシャクゴケ Scapania parvidens が観察結果にほぼ一致するようです。 平凡社の図鑑によると、本種の腹片は円頭で縁全体に歯があり、背片は大きくて、腹片の4/5以上の長さがあるとなっています。
上は葉身細胞です。
(2020.8.31. 北海道 苔の洞門)
◎ 片桐・古木による日本産タイ類・ツノゴケ類チェックリスト(2018)でチェックしたところ、本種の記載が無いことが分かりました。 M氏に調べてもらったところ、コアミメヒシャクゴケと同種となっているようです。
◎ こちらには花被をつけたコヒシャクゴケ(コアミメヒシャクゴケ)を載せています。